ドラゴンボールのヤムチャが、ザコとしての地位を確立できた理由

2016/12/21 12:10

ドラゴンボールのヤムチャは、ザコキャラとしての地位を確立している。

そんなもん確立してどうすんだ、という意見はもっともである。ザコとして有名になってどうするのか。そんな名前の売り方があるか。しかし、ザコの代名詞になるのも立派なことなのである。多くのキャラクターは記憶にも残らずに忘れられていくのだから。

この記事では、ヤムチャが有名なザコであるということを前提に進めるが、いちおう証拠をあげておく。しばらく前にヤムチャのフィギュアが発売された。サイバイマン戦で敗北した直後、地面に横たわるヤムチャをフィギュア化したものである。

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こんなフィギュアは、ザコとしての地位を確立していない人間には絶対に出せない。いちばんみじめな姿を商品化されること。そこにカネを取れるだけの需要まで生まれていること。これはザコキャラにとっての「あがり」である。中途半端なザコには、とても真似できない。

ということで本題に入る。ヤムチャはどのようにしてザコとしての地位を確立したのか? どうすれば、ザコとして名を上げることができるのか? ザコであるための条件は何なのか? 戦闘力が低ければ無条件でザコになれるのか? それとも別の素質が必要なのか?

この問いに答えるために、われわれは、ドラゴンボールにおいて「ザコ」とはどのような存在なのかを知らねばならない。

ザコとは何か?

ザコは単なる「戦闘力の低い人間」ではない。自分の強さを客観的に考えることのできない存在である。だからこそ、ザコは相手をナメたあげく、あっさりとやられる。ドラゴンボールに登場するザコは、どいつもこいつも見事にみずからの力を過信している。自己評価の狂いこそ、ザコがザコであるための条件なのである。

典型的なザコキャラを三人紹介してみたい。

まずは、ナメック星到着直後に登場するフリーザの配下である。この二人組はクリリンと悟飯を見て、相手はガキだと油断する。もちろん、クリリンと悟飯は「ただのガキ」ではない。よって、一発のパンチとキックでサクッとやられ、物語から退場する。まさにザコの典型である。

次に、コルド大王というザコである。この男は、「強敵フリーザの父親」という設定を与えられておきながら、良いところがひとつもないまま死んだザコである。当然、この男も相手の力を読みちがえている。改造フリーザを一刀両断したトランクスを見て、トランクスが強いのは「持ってる剣がすごいから」だと勘違いするのである。もちろん、トランクスは「剣なんかなくても強い」のである。よって、エネルギー弾で身体をつらぬかれ、わずか数コマで白目をむいて死ぬ。

三人目は、最終回直前の天下一武道会に登場するザコである。バンダナを巻いた長髪の男で、「ノック」と名づけられている。この男は、初戦の相手に决まったベジータをオッサン呼ばわりし、さんざん挑発したあげく、「死ね!」と言ってのけるのである。当然、ベジータに裏拳でブッ飛ばされ、壁に叩きつけられると、折れた前歯もそのままに気絶する。

このマンガでは「見る目」が問われている

並べてみれば分かるように、ザコはみな似たようなふるまいをする。「油断」と「慢心」と「読みちがい」である。ザコ特有の笑い方がある。「へっへっへ」である。この笑い方は「相手をナメている」ことの象徴である。

では、「強いヤツ」はどのように振る舞うのか? たとえば、全盛期のベジータはクリリンの気円斬を身体で受け止めようとしたナッパを叱り飛ばした。「バカめ、どういう技か見抜けんのか!」。ナッパは強い。しかし、「見る目」ではベジータに圧倒的に劣っているのだ。

ドラゴンボールというマンガでは、戦闘力と同時に「見る目」が問われている。自分と相手の強さを計り違えた者は確実に負ける。スカウターに頼ることも二流の証だ。ドラゴンボールにおける一流のキャラクターは、スカウターを参考にしつつも、それに囚われない。ここにベジータとナッパの違いがあり、フリーザと配下たちの違いがあった。ボスの「格」は、その洞察力によって描写されるのである。

ヤムチャにはまったく見る目がない

ようやくヤムチャの話になる。ヤムチャには、まったく「見る目」がないのである。ヤムチャがザコとしての地位を確立できたことは、この要因が大きい。ヤムチャには、敵の背格好で油断する姿がたびたび描き込まれているのだ。

たとえばコミックス15巻、天下一武道会の初戦でヤムチャはシェンという男と対戦する。シェンは普通のオッサンに見えるが、実際は「神様」が人間の身体を借りているのである。よって、見た目に反して、戦闘力は高い。しかし、ヤムチャは素直に見た目で判断し、「ただのオッサン」だと考えるのである。

結果、ヤムチャはシェンにボコボコにされ、説教までされる。

あなたはわたしのことをふんいきやしぐさだけで判断してしまいましたね。

そしてそのせいで中身や微妙な動きをとらえることを怠ってしまった。

それではいけません。真の武道家にはなれない…

この瞬間、ヤムチャはザコとして第二の人生を生きることになった。いわば、これはザコとしての「デビュー作」である。この日を境に、ヤムチャは「真の武道家」ではなく「真のザコ」への道を歩むことになったのだ。

そしてコミックス18巻、問題のサイバイマン戦がやってくる。フィギュアになったことからも分かるように、これはヤムチャのザコとしての「代表作」である。ここでヤムチャは、倒したと思ったサイバイマンに抱きつかれ、自爆されて死ぬ。「油断」の結果である。シェンの時と同じである。ザコは一夜にしてザコにはならない。日常のふるまいの蓄積としてザコになるのだ。

一気に時間を進める。コミックス29巻、人造人間編の序盤において、ヤムチャはひさしぶりに戦闘に参加する。この段階では、まだ誰も人造人間の見た目を知らない。そんな状況で、何者かによって街が破壊されはじめる。一行は現場に向かう。もう一度言っておく。まだ「人造人間がどのような見た目かは分からない」のである。

なのに街に降り立ったヤムチャは、ただの通行人だと勘違いして、人造人間にあっさり話しかけてしまう。結果、手刀で胸を突き抜かれ、「ピクッピク…」という情けない擬音まで書き込まれるはめになる。シェンの説教、サイバイマンの自爆をへても、やはりヤムチャは同じあやまちを繰り返しているのだ。これがザコとしての「決定打」である。

立派なザコになるために

まとめて終わる。ヤムチャは、天下一武道会のシェンとの戦いでザコ界に衝撃のデビューを果たした。この段階では「ザコ界にイキのいい若手が入ってきた」という感じである。そしてサイバイマン戦で自爆されることで、ザコとしての評判を不動のものとした。「ただの一発屋じゃない」ということである。そして、人造人間をただの通行人だとかんちがいしたことで、ザコ史にその名を残す存在となった。「あれは本物の才能だ」ということである。

ザコとしての地位を確立し、敗北後のすがたをフィギュア化されたいならば、とりあえず、これくらいのことはしなくてはいけない。ザコは一日にして成らず。精進あるのみ。ザコになりたいなら、どんどん油断していきましょう。

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上田啓太
執筆業。個人ブログ『真顔日記』を中心に、ネットの様々な場所で活動中。気に入った作品ばかり何度も読む習性がある。1984年生。京都在住。