プレイボールで田所さんの奢れなかったうな丼はどれだけ高いのか

プレイボールで田所さんの奢れなかったうな丼はどれだけ高いのか
 

こんにちは。国府町怒児(こうまちぬんじ)と申します。
皆さんは、野球部のOBと言えばどのようなイメージがありますか。
伝統を押し付けてくるOBでしょうか。
卒業したのにけっこうな頻度で現れるOBでしょうか。
もちろん、悪いOBばかりではないはずです。
特に、今回扱うプレイボールという漫画には、OBの鑑のような人物が登場します。

プレイボールとは

プレイボールとは、1973年から1978年にかけて週刊少年ジャンプで連載された野球漫画です。
墨谷高校に入学した主人公、谷口タカオが弱小野球部を強豪に育て上げていくストーリーです。
シンプルな絵のタッチや試合の心理的な駆け引きなど独特の魅力があり、根強い人気を誇ります。
2017年にはグランドジャンプにて、プレイボール2という別作者による続編的な作品が始まっています。
因みに、作者のちばあきおは、あしたのジョーなどを描いたちばてつやの弟にあたります。

その中に出てくる、田所さんという登場人物に私は惹かれました。

田所さんについて

田所さんは、谷口が墨谷高校に入学したときにキャプテンを務めていた男です。
学年的には谷口の2つ上に当たります。
ポジションはキャッチャーで、正直選手としてはそれほど目を引く存在ではありません。
注目すべきは、OBとしての田所さんです。
冒頭でOBの鑑と言ったのはこの人のことで、もうとにかく面倒見がいいのです。

田所さんの面倒見のよさ

(『プレイボール』3巻 122p参照)

田所さんの面倒見のよさの片鱗は、現役時代に既に見られます。
コミックス3巻では、谷口と話し合いをするために、たいやきを奢っています。
もちろん、じっくり話したかったというのは分かりますが、
「それにしても後輩にたいやき奢ってあげるなんていい先輩だなあ」と思ってたわけです。

この面倒見のよさが、卒業してOBになってから加速していきます。
試合の日に駆けつけて応援団を買って出るなんてのは、序の口です。

(『プレイボール』13巻 57p参照)

練習中にアイスの差し入れにやって来ます。
何かのついでとかじゃないですよ?
母校の四回戦進出を祝いたくて、アイスを差し入れるためだけに、仕事の合間を縫って学校に来るんです。

(『プレイボール』13巻 76p参照)

さらには、試合前の控え室に現れて、自作のスタミナドリンクを振る舞います。
自作ってところがすごい。
どんだけ甲斐甲斐しいんだ。
「レモンとハチミツ それにタマゴの黄身をまぜたありふれたやつだけどよ」(『プレイボール』13巻76p)って言ってますけど、これ、世界に一個しかないドリンクですよね。
田所さんの愛情が入っているんですから。

(『プレイボール』19巻 34p参照)

最終的には、他のOBに掛け合って、OB会からのプレゼントという形で、河川敷のグラウンドを週二回一年間借りてもらうところまで漕ぎつけます。
田所さんの行動力には、本当に敬服しますよ。
後輩のためには、労を惜しまない。

でも、そんな田所さんでも、一つだけ後輩との約束で果たせなかったことがあります。
それが、「うな丼を奢る」という約束です。

なぜうな丼を奢ることになったのか

(『プレイボール』13巻 62p参照)

事の発端は、夏の四回戦、聖陵高校との試合前です。
アイスクリームの差し入れに来た田所さんは、「うむ!夏バテ予防にはうなぎだ うな丼おごろう」(『プレイボール』13巻63p)と自ら提案します。
そして、激闘の末に墨谷高校は聖陵高校を下します。
さあ、うな丼だ。
田所さんがご馳走を奢ってくれる。
ナイン達は色めきたって田所さんの後をついていきます。

うな丼が高すぎる

(『プレイボール』13巻 149p参照)

しかし、ここで暗雲が立ち込めてきます。
うな丼屋さんの外に値札がないのです。
嫌な予感がした田所さんは、お店の中にメニューを見に行きます。
そこで見たのは、「梅 千二百円 竹 千六百円 松 千八百円」(『プレイボール』15巻149p)という値段。

田所さんは、「せいぜい高くって千円ぐらいかと思ったが・・・」(『プレイボール』15巻149p)と、予算オーバーに戸惑いを隠せません。
そして結局、お茶だけ飲んでうな丼屋を後にし、ナインには別の店で500円の上かつ丼を奢りました。

私は思いました。
「あの田所さんの心を挫くうな丼は、どれだけ高いんだ」と。
おそらく2017年の1,200円とは価値が違うのでしょう。
そこで田所さんの懐具合を推測して、うな丼の高さを実感しようと思い立ちました。

田所さんの給与

 

まずは、田所さんの給与です。
田所さんは、高校を卒業して家業の電気屋に就職しています。
ということは、高校卒者の初任給を調べれば概ね収入が分かるわけです。
プレイボールは、1973年から連載開始の漫画です。
そして、うな丼の時点では作中で1年が経過しているので、1974年の初任給を調査しました。

『昭和49年 賃金構造基本統計調査報告』(厚生労働省大臣官房統計情報部賃金福祉統計課 1974)によると、高校卒者の平均初任給額は、65,800円(月額)です。
これに準拠して、田所さんは概ね月額65,800円の給与をもらっているとしましょう。

因みに初任給は、前年の昭和48年が51,000円なのに昭和50年には74,900円と急激に上がっていて、経済成長している様子が見えて面白いです。

給与に占めるうな丼の割合

次に、うな丼を奢るのにかかるお金を求めます。

うな丼の値段×うな丼の数=うな丼にかかるお金という式に当てはめていきます。

(『プレイボール』15巻 157p参照)

うな丼のお金は、上述のように最低額の梅で1,200円です。
うな丼の数は、カツ丼を15人前頼んでいる記述から、15個とします。

すると、1,200×15で18,000。18,000円かかることになります。

 

田所さんの月給65,800円に対しての割合は、18,000÷65,800=0,273556231。
約27%です。

分かりづらいので、2017年の貨幣価値に直しましょう。
月収20万円の場合、一食で54,711円が吹っ飛ぶ計算です。
かなり痛いですね。
月収20万円が丸々もらえる訳ではなく保険料や年金の控除もありますからね。

うな丼の竹を選んだ場合は、合計24,000で給与に占める割合は0.36474164133。
月収20万円に対して72,948円です。
そして、うな丼の松を選んだ場合は、合計27,000で給与に占める割合は0.4103343465。
月収20万円に対して82,066円となっています。

うな丼の位置づけ

 

15個も頼もうとするのが悪いとは言え、うな丼ってそんな高いものなのでしょうか。
最後に、当時の食生活から、うなぎの位置づけを見てみましょう。
『昭和49年 家計調査総合報告書』(総務省統計局統計調査部消費統計課 1974)の「1世帯当たり年間の品目別支出金額及び購入数量」というデータを紐解きます。

1974年の平均世帯人数は3.90人です。
そして、364番目に、「うなぎのかば焼き」という品目があります。
こちらの消費量が、1世帯当たり年間で1,445円です。

もちろん、各世帯の金銭的な豊かさにばらつきがあるので何とも言えないですが、気軽に食べられる品でない様子は分かります。
そんな高級品を後輩に奢ろうとした田所さんには本当に頭が下がります。

まとめ

以上で調査を終わります。
うな丼、高かったですね。
田所さんが挫けるのも頷けます。

あ、そうだ。
うな丼の値札にショックを受ける田所さんの表情が非常にいいので、それだけ紹介させてください。

(『プレイボール』15巻 149p参照)

あぜん。

参考資料

フリー写真素材 フォトック』(最終確認2017/6/7)
プレイボール』3巻 ちばあきお 1976 集英社
プレイボール』13巻 ちばあきお 1978 集英社
プレイボール』15巻 ちばあきお 1978 集英社
プレイボール』19巻 ちばあきお 1979 集英社
『昭和48年 賃金構造基本統計調査報告』厚生労働省大臣官房統計情報部賃金福祉統計課 1973
『昭和49年 賃金構造基本統計調査報告』厚生労働省大臣官房統計情報部賃金福祉統計課 1974
『昭和50年 賃金構造基本統計調査報告』厚生労働省大臣官房統計情報部賃金福祉統計課 1975
『昭和48年 家計調査総合報告書』総務省統計局統計調査部消費統計課 1973
『昭和49年 家計調査総合報告書』総務省統計局統計調査部消費統計課 1974
『昭和50年 家計調査総合報告書』総務省統計局統計調査部消費統計課 1975
『新版 日本長期統計総覧 第4巻』財団法人日本統計協会 2006


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