月刊MdNが『マンガ雑誌をMdNがつくってみた』という特集でマンガ雑誌をつくったと聞いて[後編]

2017/08/15 11:34

さて、COMIC MdNを「どういうマンガ雑誌にしようと思ったのか?」の話です。

まず、既存の少年誌や青年誌のようなものは僕らには作れません。また作るべきじゃないな、と。
だってかなわないところ、違うところがいっぱいありすぎます。羅列してみます。

  • COMIC MdNは一回こっきりの企画モノ
  • こっちはマンガ家とのコネクションはゼロ
  • そもそもマンガをディレクションするスキルが編集部にない
  • 背景などを描いてもらうアシスタントを雇うようなノウハウもよく知らない
  • COMIC MdNは本誌も含めて1,680円(税込み)という高額商品

たくさんありますね。

*****

これらを見渡しながら、新参者ならではの戦えるポイントを探ろう、つまり以下のような差別化を図ろうと思いました。

【A】リッチな佇まいで保存版感を出す
ふつうのマンガ雑誌は、ざら紙が使われているし、毎週発売されているし、連載マンガばかりだし、モノクロだし、ということで、ずっと保存しようとする人は、なかなかいないのではないでしょうか。

それに対して「MdN9月号+付録マンガ雑誌COMIC MdN」は、1,680円(税込み)という高額商品ということで、保存版的な内容、佇まいになることを心がけました。
例えばカラーマンガが中心で、モノクロページ少なめのリッチな佇まいにするとか。
用紙も、書籍に使われるようなしっかりとしたものを使用。白色度も高くて、印刷した色もなるべく美しく出るものをセレクトしています。

【B】マンガ家に発注しない
マンガ家やマンガ家を志している人に発注したら、絶対に既存のマンガ雑誌にかなわない。
あと、マンガって絵のうまさ(というのは誤解されやすい表現なのですが)だけで勝負してないですよね。ストーリーの面白さだったり、コマ運びだったり、総合力で勝負するジャンルで。
そういう勝負の仕方は、COMIC MdNではちょっと出来ないと思いました。やろうと思ったら、作家と打ち合わせながら、こっちもディレクションのスキルを高めつつ、クオリティを上げていく。2年くらいかかるかも。そんなの作家も付き合いませんよね……。

【C】マンガや記事が集まったときに「いい本」と感じる文脈に
ココらへんは【A】とも被るのですが、価格が高い本なので、マンガや巻頭グラビアなどの記事が集まった時に、「この集合体でまるでひとつの作品だな」とか「このラインナップだからこそ感じる時代性があるな」とか、とにかくお金を出してよかったと思えるような筋を通してあげるように心がけました。
この「筋」というのは【B】の作家選びとも結びついてくる感じですよね。

【D】ポップな商品にする
上記で「リッチ」とか「いい本」みたいなキーワードが出てきていますが、そうすると人を選ぶ、敷居の高い感じになって、売れないものになってしまいます。
なので、マンガ作品もふつうのマンガ雑誌の文脈とは違うけど、わかりづらいものにはしないようにしましたし、表紙や巻頭ビジュアルで、乃木坂46の齋藤飛鳥さん、映画「ワンダーウーマン」、BiSHなどに登場してもらったりして、ポップな佇まいをキープするよう心がけました。

*****

と以上、列記した【A】~【D】を前提条件にしながら、作家を考えていきました。
この中で、詳しく話しておきたいのが
【B】マンガ家に発注しない
です。

だったら、誰に発注するんだ!と。
【B】でマンガのことを、「絵のうまさだけで勝負してない」「総合力で勝負するジャンル」と書きました。

自分たちが何だと勝負出来るかと考えたら、逆にまずは「絵のうまさ(のみ)で勝負する」べきなのではないか、と思ったんです。
コミックイラストやそれに属すると思われるようなイラストに関しては知見のある編集部の方だと思います。これらのイラストを描く人たちは、絵がべらぼうにうまい。

ただ、この「絵のうまさ」という言葉がやっかいなのですが……。
誤解を招くかもしれませんが、『賭博黙示録カイジ』などを描かれている福本伸行さんは、彼が表現したいと思っているストーリー、世界観などに必要な絵の力、魅力が本当にあると思います。いや、むしろあの絵じゃないといけない。
でも、「絵がうまい」というジャンルではないかな、と。

マンガの第一印象ってやっぱりまず「絵」が目に飛び込んでくるので、COMIC MdNはまず、ここに特化したすごいものを作ろうと思いました。
となると、コミックイラストやそうとは言い切れないけど、そのジャンルの境界にいるような絵を描かれる方に思い切ってマンガを発注しようと思いました。

結果、イラストレーターやアニメーターという人選が自ずと浮かび上がってきます。
その後の各作家のセレクト理由はすでに上記で書いたとおりです。

*****

いざマンガがあがってきたら、誤算がありました。
意外にも、マンガを描き慣れていない方々なのに、絵がうまいだけでなく、マンガがうまい……。
これは世代なのでしょうか。マンガを日常的に読み慣れているせいなのか、マンガの文法が身についてらっしゃる気がしました。
だから、本当に恥ずかしくないマンガ雑誌が出来てしまったな、と思っております。

本気でCOMIC MdN、読んでみて頂きたいです!

*****

……はい! マンバ通信さんに「コメントを下さい」と連絡を頂いたので、コメントを書いてみました。だって文字数とか指定されてなかったし!

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!(いるのかな……)


と、以上、月刊MdN編集長 本信光理さんからのコメントでした! 長っげ!

しかし、今回の特集の熱い解説でもあり、編集者が一冊の特集を作り上げるためにどのようなことを考えているかがわかる貴重な資料となったのではないでしょうか。

そしてもちろんこのコメントの出し方自体は、作り出したものをどうプロモートするかのひとつの挑戦的なサンプルになっています。アホほど長く、そしてニュースなのに前後編になっている!

考えてみれば、編集者や著者はその作品を人に届けるための努力を目一杯やりますよね。小さな書店でのサイン会やトークショーなどに出張ったり。そう考えると、この本信編集長の目一杯の『コメント』もヒジョーに真っ当な編集長としてのお仕事なのかもしれません。「このひと、どうかしてんナ〜」と思っててすいませんでした〜。

この記事で書かれていることが、どのようなコミック雑誌として結実したのか? 雑誌を手にとって確かめてみてくださいね!


『COMIC MdN』に掲載されているマンガのクチコミを書いてみませんか?マンバには、単行本になっていない読み切り短編作品のクチコミもたくさん集まっています。みなさんの感想やクチコミをお待ちしています!

読み切り短編作品に関するマンガ情報・クチコミ一覧

月刊MdN 2017年9月号(特集:マンガ雑誌をMdNがつくってみた!)[雑誌]