世界最速書籍化マンガ『こぐまのケーキ屋さん』カメントツ インタビュー

写真:川瀬一絵(ゆかい)

こんにちは、マンバ通信です。

その昔「マンガを読む」というと、マンガ雑誌やコミックを買って読むことが一般的でしたが、近頃はインターネットのおかげでタブレットやスマホからマンガが読める時代になりました。

また、発表の場も出版社などのメディアを通した媒体ではなく、個人がSNSを使って自由に作品を公開することも当たり前になってきて、巷にはマンガがあふれまくっている今日このごろです……が! Twitterに突如現れた『こぐまのケーキ屋さん』という4コママンガがめちゃくちゃ話題となっているのを、みなさんご存じでしょうか。

ご存じですよね、だってめちゃくちゃ話題ですもん……!

こぐまのケーキ屋さん』は、パティシエのかわいい「こぐま」と「お客さん」のほのぼのとしたやりとりが4コママンガで描かれていて、そのほんわかエピソードを読んだ人々からは「かわいい」「癒やされました」の声が続々と寄せられ大大大大反響。

疲れた友人に「こぐまのケーキ屋さん」の漫画を描いてあげたら思いのほかウケたのでお納めください。

Twitterに初投稿された最初のマンガは、拡散に次ぐ拡散でなんと11万リツイート&26万イイネ(2017年12月現在)がつき、さらには投稿6日目にしていきなりの書籍化発表! これはもうギネス申請してもいいんじゃないかと思うほどの世界最速書籍化決定の速さでした。

作品から漂う「のんびり」「まったり」感とは裏腹に、まるでジェットコースターのような目まぐるしい展開を体験した作者のカメントツさんに『こぐまのケーキ屋さん』についてお話をうかがいました〜。


友人との会話からうまれた『こぐまのケーキ屋さん

──そもそも『こぐまのケーキ屋さん』が生まれるきっかけはどういうところから?

近所におじいちゃんがやっているケーキ屋さんがあるんです。そこのおじいちゃんは腰が90度くらい曲がった状態のままショーケースに手をかけて「いらっしゃいませ~」って言うんですよ。そのおじいちゃんがかわいいくまちゃんに転生したら、ケーキ屋さんも繁盛するんじゃないかっていう話を友達にしたら「それかわいい」って喜んでくれて「じゃ、マンガにしてみようかな」と思って描いてみたのがはじまりですね。

近所のケーキ屋のおじいちゃんを再現するカメントツさん

──何気ない会話から生まれたんですね。

そうなんです。小学生の頃、友達と話してたオリジナルヒーローを自由帳に具現化して描いてあげると、その友達が喜んでくれて、僕もそれが嬉しかった思い出があって。普段から会話の中で思いついたことをマンガにするっていうのが好きでよくやりますね。

──最初に『こぐまのケーキ屋さん』のくまちゃんを描こうと思ったとき、何かモデルにしたものはありますか?

もともと『くまの子ウーフ』という児童文学作品が大好きだったので、ベースはそこなのかなと思ってます。でもそれに気がついたのは何話か描いたあとですね。「くまちゃんって、なんか既視感あるな」と思って改めて考えてみたら『くまの子ウーフ』でした。

──これまでカメントツさんが描かれていたマンガは『カメントツの漫画ならず道』のようなルポマンガがメインだったと思うんですが、今回のように話をイチから創作することに難しさを感じたりはしませんでしたか?

実は『こぐまのケーキ屋さん』のことを“創作物”とはあまり思ってないです(笑)。僕の頭の中に彼らが存在していて、その日常を見て描いている……という感じなので。だから、これまで描いてる話もそんなにウソだとは思ってなくて、ルポマンガと『こぐまのケーキ屋さん』を描き分けている感覚はないですね。

──だけど作風の違いに周りの人は驚かれたのでは?

こぐまのケーキ屋さん』を描いたとき、周囲からは「カメントツどうしたんだ!?」ってビックリされましたね。人を驚かすのが好きなので僕的には「しめしめ……」と嬉しく思いましたが。

──驚く速さで単行本化が決まりましたよね。

1話を公開した時点で、「ウチで連載してください」とか「本にしませんか?」というお誘いが一気に15件くらい来たんです。

──えっそんなに!?

今やってる仕事のメールが届いているのかどうかがわからないくらいオファーのメールがたくさん届くようになってしまったので、とりあえず単行本化が決まればメールも落ち着くかなと思って、早めに決めてアナウンスしたところもありました。

──1話目から即書籍化が決まるなんて、いくらなんでも予想できないですよね。

ちょっとおかしい状況でしたね(笑)。だってこれからの展開もなにもわからないじゃないですか。でも、こんなにたくさんのオファーをいただけてありがたかったです。

──この大きな反響にカメントツさん自身も驚かれたんじゃないですか?

そうですね。でも、人気や書籍化を狙って描いたわけでもないので、今でも理由がわからないんです。逆に「こぐまのケーキ屋さん」の魅力をわかってる人がいたら教えてほしいくらいなんですよ。

──こぐまの無邪気さとかかわいらしさに癒やされてる人は多いんじゃないでしょうか?

でも、世の中には「カワイイ」とされているものがたくさんありますし、それらを描いている作家さんもたくさんいらっしゃいますよね。自分が描いた作品がなぜこんなに受け入れてもらえたのかは……未だに自分自身あまりよくわかってないです。

──今も人気のツボがよくわからないまま手探りで描いているんですか?

そうなんですよね(笑)。自分自身、作品を描くときはロジックで作っていく方だとは思っていて……今の状況を例えると、お腹が空いた友達に目玉焼きを作ってあげたら、突然高級ホテルの方が来て「その目玉焼きをウチで提供させてください」っていう感じなんですよ。未だにこの件に関してはロジックがつかめてないし、読んでくれてる人たちが作品のどの部分を喜んで見ているのかがわからないので、不安なところもありますね。

──カメントツさんのマンガのタッチは絵本のような印象を受けるんですが。そこも『こぐまのケーキ屋さん』の雰囲気に合っていたのかもしれませんね。

普通のマンガは描きたくないなと思っていたので、昔はトーベ・ヤンソンの模写をやってみたりしてました。

──なるほど!

パッと見て「カメントツの作品だ」ってわかってもらえるような線のタッチとかがいいかなと思ったので、東急ハンズに売ってある黒のペンをとりあえず全部買ってきて。

──全部!? 何本くらい買ったんですか?

150本……200本くらいあったのかな。東急ハンズの大きい袋が黒いペンでパンパンになるくらいありました(笑)。それを家に持ち帰って、すべて試し描きしてみたんです。そしたらポスカが一番しっくりきたので。

──えっもしかしてこれ全部ポスカで描いているんですか?

はい。黒と白のポスカで描いてます。色つけはデジタルでやってますが。

『カメントツの漫画ならず道』2巻(小学館)より

──そういえば、カメントツさんってスクリーントーンも使ってないですよね。

カメントツの漫画ならず道』も『こぐまのケーキ屋さん』も使ってないです。だけど、この間はじめてスクリーントーンを使ってみたらめちゃくちゃ便利で「なんで今まで使わなかったんだろう」って思いました(笑)。完全にストイックさの方向性を間違えてましたね。

こぐまのケーキ屋さん』の連載は朝のラジオ体操のような感じ

──現在は1日1話更新という感じですよね?

1日1話更新っていうのが、自分にとってもリズムが合っていますね。もともとマンガを描いてますが、マンガ家っていつ仕事してもいい職業じゃないですか。だからこれまで決まった時間に起きるということがあまりなかったんです。だけど、1日の生活サイクルに『こぐまのケーキ屋さん』を絶対にアップするぞっていうルールを決めたら、生活のリズムが作れるようになったんです。『こぐまのケーキ屋さん』を描くようになってからは、朝8時くらいに起きて、1時間くらいでネームを描いて、作画してお昼頃にはアップしているので、そこから生活がスタートするようになったので、すごく調子がいいんですよ。

──朝のおつとめ的な……?

朝のラジオ体操みたいな感じですね。他の作画の仕事が立て込んでいるときはお休みしてしまうこともあるんですが、今のリズムはこれからも続けていけたらなと。

読者の頭の中でもくまちゃんが動いているのかもしれない

──ファンのみなさんたちが『こぐまのケーキ屋さん』に関する絵を描いたり、フィギュアを作ったりしているのをTwitterでよく見かけるのですが、どれも完成度が高くて愛を感じました。

ありがたいですよね。3Dでくまちゃんを作ってくれた方がいらっしゃるんですが、くまちゃんを回転させていろんな角度から見ることができるんですよ。僕の描くくまちゃんって、最初の方は顔の描写が安定しないんですよね。

──そういえば、Twitterで比較されている方もいましたよね!

一番最初に描いたものは表情や大きさが安定していなくて、コマごとにどんどん変わってました。マンガって本当は最初にキャラ表を作って、登場人物の大まかな設定を決めるじゃないですか。だけど今回は何も考えずに描いてしまって、かなりバラつきがあるんですよ(笑)。だけど、さっきの話にも出た3Dデータのおかげで「あ!くまちゃんってこっちから見るとこんな風になってるんだ!」って知ることができて、助かってます(笑)。

──ファンアートをオリジナル作品に役立てるのって新しいですね。

あとは、シルバニアファミリーのくまのシリーズを買ってきて、それを参考にしたりもしているので家にどんどんくまのグッズが増えてきてますね。くまを題材にした本とか写真集とか。かなり詳しくなってきました。

──今後の展開などは何か考えていらっしゃるんですか?

自分の中ではすでに世界観やキャラクターや登場人物についてもすでに決めているんですけど、それを小出しにしているのが読者さんにはバレてる気が(笑)。

こぐまのケーキ屋さん「うさぎのスーパー」

──そうなんですか!?

自分の中にはすでにサーガがあるんです。お店の外見についてもまだはっきりとは出してないんですけど、それについても読者の人には勘づかれていて「きっと想像で膨らましてくれてるんだろうな~面白いな~」って思いますね。

──ファンの方の想像が当たっている場合もありますか?

そうですね……こぐまの木彫りを作ってくれた人がいるんですが、その方の作品にはショーケースに上るための階段がつけてあるんです。僕もそれは想定していたことだったので、僕の思いがテレパシーで伝わったのかなって(笑)。

──やっぱり読者の人の頭の中でもくまちゃんがリアルに動いていて暮らしているのかもしれないですね。

そうだと思います。くまちゃんの動きの予想しやすさみたいなものがあるのかも。ドラえもんやアンパンマンみたいにキャラクターの性質が安定しているものって、二次創作しやすいですよね。僕も子どもの頃ドラえもんやアンパンマンをムキムキに描いて楽しんでいたので、みんながあの頃の楽しさでやっているのなら、それは嬉しいですよね。ただくまちゃんが大きくなって人を殺したり、食べたりしてしまう展開は悲しくなっちゃいますが(笑)。

──『こぐまのケーキ屋さん』の連載は今後もしばらく続けていくのでしょうか?

1冊本にするというのが決まったので、しばらくは今のペースで描き続けたいなと思います。できれば、末永く愛されるキャラクターにしていきたいですね。今は自分の頭の中でできあがってるものをポンポンと出していて、まだマンガにできてないことがたくさんあるので、そこはどんどん広げて描いていきたいと思っています。まだまだ準備段階のものが多くて、お話しできないことも多いんですが、いろんなプロジェクトが動いているので楽しみにしててほしいです。

──ありがとうございます! 今後の展開も楽しみにしています!

カメントツさんの取材後、『こぐまのケーキ屋さん』グッズ発売が決定したそうです〜。12/26(火)~ロフト全国29店舗にて販売スタート。詳しくはこちらをチェックしてみてください〜。


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