日仏会館で開催された「描くひと 谷口ジローの世界」にいってきました……去年。

2018/03/08 3:58

写真 池ノ谷侑花(ゆかい)

こんにちは、ドッグナマコです。

昨年の2月にこの世を去ったマンガ家・谷口ジローさんの原画展「描くひと 谷口ジローの世界」が、12月に恵比寿の日仏会館ギャラリーで開催されましたが、みなさん行かれましたか?

……というのも去年の話ですが。えっっっっっっっ去年!? もう去年……!!!

今回マンバ通信では、その展示の様子をお届けしたいと思います。(遅レポーーーーーー!!!!)

取材当日、展示会場には谷口ジローさんの版権を管理する一般財団法人パピエの代表を務める米澤伸弥さんが在廊されていたので、この原画展を開くことになった経緯や谷口さんの原画の見どころなどのお話もあわせてご紹介しますっ!!

ギャラリーにはアーチ状の入口が特別に作られており、入ってすぐの脇の方では過去作品や画集など書籍の販売もされていました。

──そもそもこの日仏会館ギャラリーで展示をすることになったのはどういう経緯からですか?

昨年の2月に谷口ジローが亡くなってしばらく経った頃、出版社やマンガ家さんたちと「谷口ジローを偲ぶ会」をやろうってことになり、その準備をしていました。ちょうどその時にこの日仏会館の方から「この場所で展示をやりませんか?」という申し出をいただきました。これまでこんな形で彼の作品の原画をまとめて出したことはなかったので、これを機会にもっと広く知っていただきたいという気持ちもあり、開催をお引き受けしたという次第ですね。

『歩くひと』(1990 – 1991年)

──入口に入るとすぐ劇画調の原画ありましたが、谷口さんって初期はこういったタッチの絵を描かれていたんですね。

本当はもっと劇画調のものがたくさんあるんだけど、今回は単行本になってないものを展示したいと思って、このあたりの作品を選びました。ここに展示しているもので一番古いのは1970年の『声にならない鳥の歌』、その次が『嗄れた部屋』かな。

左下が『嗄れた部屋』が掲載された当時のマンガ雑誌、過去には学習マンガなども描いていた。
『事件屋稼業』(1979 – 1994年)/共著:関川夏央

──谷口さんはこれまで多くの作品を残されてきましたが、今回原画を展示するにあたって、何か選定基準とかはあったんでしょうか?

今回、扉絵に使われるカラー原画はもちろんですが、どちらかというとマンガらしい原画を選びました。

──マンガらしい原画というと?

コマ割りされた原画ですね。谷口さんの絵といえば、精緻で隅々まで描き込まれた印象があると思うんですけど、あくまでも彼はマンガ家であって画家ではないので、1枚の絵としてではなく、見開きでコマの流れがわかるようなものを見ていただく方が醍醐味があっていいのではないかと。だからマンガ作品に近い原画をなるべく出そうと思って用意しました。1枚で迫力のあるような絵の原画はたくさんあるんですが、そういうものは極力避けて選んでます。

『海景酒店』(1986年)/共著:関川夏央

──谷口さんのマンガ原稿というのは現在どれくらい残っているんでしょうか?

原稿は今1万7~8千枚ほどあります。今回はその中から全期間のものを網羅するように心がけて約70枚くらいに絞りました。

──そういえば、谷口さんは生前からよく「バンドデシネ(以下BD)に影響を受けた」とも仰ってましたね。

彼はそもそもどこかの美大を出たとかそういった正規の美術教育を受けたわけではありません。マンガからマンガを学んだ人なんです。

国内外の優れたマンガ作品を何本も見て、「こんな描き方があるのか!」という驚きからはじまり、それを自身の作品に取り入れる工夫を試みる……といったように、自分で自分を作っていった作家の一人なんです。

『孤独のグルメ』(1994 – 1996年)/共著:久住昌之

彼の作品を見ると、BDのように緻密に描かれた視点と、手塚治虫以降の日本のマンガのようにコマとコマ、ページとページの流れの中に絵があるという、そのふたつの要素が彼の作品の中には存在しているような気がしています。

──谷口ジローらしさというのはほかにどういったところでしょうか?

静と動がはっきりとしているところですね。
あとこれも原画を見て強く感じることなんですが、実際の発表の場であるマンガ雑誌のザラ紙に印刷された際、彼が描き込んだ絵がどこまで再現できるのか?と疑問を抱くくらいの限界ギリギリ部分までの描き込みは、マンガ家として活動しはじめた初期の段階から見られる特徴だと思います。

『K』(1986年)/共著:遠崎史朗

──それは線画の描き込みということでしょうか?

いえ、ペンで描く線だけではなく、スクリーントーンによる繊細な処理も同様ですね。

彼のスクリーントーンの多様さは「坊ちゃん」の頃からどんどんエスカレートしているのが、順を追って見ていくとすごくわかります。1コマの中にスクリーントーンを何枚も重ねて、それらの多くは削られたりして、淡いけど明晰、容易に省略されることなくきっちりと描いているんです。

左の原画に描かれた観客席はすべてスクリーントーンによって描かれたもの。 『青の戦士』(1980 – 1981年)/共著:狩撫麻礼

どの作品を見ても、時間をかけて大変丁寧に描かれていることが原画だからこそわかります。そういう丁寧に描かれた精緻な絵がページを追っていく中に次から次にあらわれて、それらが物語を紡いでいく……それが谷口ジローのマンガなんです。それらが構成要素として巧みに組み合わされているのが本当に素晴らしいですね。

展示の最後には谷口作品の翻訳語版(主に仏語)と生前のインタビュー映像が流れていました。

 

──と、インタビューはここまで。

米澤さんのお話を伺ったあと、再度原画を見に行くとその意味がよくわかりました。

1コマ、1コマの絵の仕上がり、それらがどのように流れを作っているのか、絵から絵へのリレーによって広がる谷口ジローさん独自の空間と時間の流れが楽しめる最高の原画展だったと思います。
って、3ヶ月くらい前に終わってしまいましたが〜〜〜〜!!!

……と! ここで朗報です!

『描くひと 谷口ジロー原画展』は.4月14日〜5月13日まで鳥取県立博物館で開催されるそうです。
ちょうどゴールデンウィークの期間にもあたるので、気になる方はぜひぜひ行ってみてください〜。

以上、レポートにてドッグナマコが失礼しましたっ!


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