『落第忍者乱太郎』の私服に傾向はあるのか

2018/03/16 12:00

皆さんは、忍たま乱太郎というアニメをご存知ですか?
NHKで夕方に放送されていることから、子供のときに観たという方も多いのではないかと思います。

意外と知られていないですが、忍たま乱太郎は『落第忍者乱太郎』というマンガが元になっています。

『落第忍者乱太郎』とは?

落第忍者乱太郎は、1986年から『朝日小学生新聞』に掲載されているギャグマンガです。
30年以上経った今でも、新作が出続けています。

一人前の忍者になるべく忍術学園に入学した乱太郎。
彼が、きり丸やしんべヱといった仲間たちと学びながら、ドタバタ劇を繰り広げます。
タイトルに「落第忍者」とあるように、普段はドジで詰めが甘いですが、事件が起きたときなどは意外な活躍をします。

作者は、尼子騒兵衛。
日本史に明るく、作中でも細かい歴史知識を紹介してくれています。
積極的に現地取材を行い、常にアイデアを絶やさないようにしている姿勢が、コミックスの作者コメントで確認できます。

乱太郎の服装

さて、これはアニメ版とマンガ版で共通なのですが、乱太郎の服装と言えばどういったものを思い浮かべますか?

(『落第忍者乱太郎』57巻104p 参照)

おそらく、多くの人が上記のような忍術学園の制服を挙げるかと思います。
この「♯」と「○」が均一に施されたような柄は、特徴的ですよね。

(『落第忍者乱太郎』61巻6p 参照)

ただ、乱太郎はいつも制服を着ているわけではありません。
忍術学園が長期休みに入り、実家に戻る際などには、私服姿を拝むことができます。

そして私は、これらの服から、ただ当時の着物を当てはめているだけではないようなオーラを感じました。
どうも、キャラクターごとのイメージ合わせて着せているのではないか。
そう思った私は、乱太郎たちの私服を集計してみることにしました。

私服集計のレギュレーションと結果

私服の集計は以下のレギュレーションで行いました。
・範囲は、コミックス『落第忍者乱太郎』の1巻〜62巻(2018/03/01時点の最新刊)
・対象キャラクターは、乱太郎、きり丸、しんべヱのメイン3人とする
・服の登場回数を集計する
・登場回数は、1章(「○○○の段」)の中に1コマでも登場したものを1回とカウントする
・リバーシブルの服は、文様が違っても1着としてカウントする

集計を行ったところ、意外な事実が判明しました。
コミックス16巻に新しい私服が出たのを最後に、17巻から62巻まで、メインの3人は2着の私服を着回しています。
なのでランキング的には、登場回数の1位と2位が飛びぬけて高くなっています。

では、その2着の私服とは何なのか。
どうしてその2着になったのか。
発表と考察をしていきたいと思います。

乱太郎編

まずは、乱太郎の私服から見ていきましょう。
寝巻きを含めて全15種類出てきました。

1位 トンボ 75回

(『落第忍者乱太郎』6巻73p 参照)

乱太郎が1番よく着ていたのは、トンボ柄の服です。
彼らしい素朴でのほほんとした服だなという印象です。

トンボの文様は、日本では古くから親しまれていて、弥生時代の銅鐸(どうたく)にもその柄があしらわれています。
トンボの別名が「勝虫(かちむし)」と呼ばれていたことから、戦国時代や江戸時代には武士の縁起物として好まれました。
さらに、トンボは草や棒の頭(先っぽ)にしか止まらないため、「頭(かしら)に出世して欲しい」と願いを込めることもあります。

乱太郎の家は、先祖代々三流忍者の家系です。
トンボの服が両親からもらったものだとしたら、案外出世への想いが託されているのかもしれません。

2位 雁 74回

(『落第忍者乱太郎』4巻53p 参照)

2位は、雁の柄の服です。
1位と殆ど回数は変わらないですね。
乱太郎が几帳面にバランスよく着ている様子が分かります。

雁は、俳句では晩秋の季語として親しまれています。
乱太郎の星座は射手座(11月下旬〜12月下旬、乱太郎の誕生日は不明)なので、
もしかしたら乱太郎は、自分の生まれた季節に因んだ服を着ているんですかね。

トンボと共通するのは、自然の中で見られるモチーフという点です。
乱太郎の父親は、忍者の仕事がないときに農業をしています。
その関係で、普段から田舎で見ている風景は親しみ深いものがあるんでしょう。

(『落第忍者乱太郎』5巻21p 参照)

因みに3位は、画像のような柄でした。
登場回数は4回です。

トンボや雁と比べると、抽象的な文様ですね。
花火を思わせる柄は、やや派手にも見えます。
悪くはないですが、上位2つに比べると乱太郎の個性が見えづらいということでお蔵入りになったのでしょうか。

この3着を見ることで、乱太郎は「全体に文様の入った服(散らし文様)」が好みなんだろうなということが、うっすらと分かります。

きり丸編

次は、きり丸の私服を見ましょう。
寝巻きを含めて全20種類ありました。
複雑な事情を抱える彼は、考察のしがいがあります。

1位 春草 60回

(『落第忍者乱太郎』57巻11p 参照)

きり丸が一番よく着ている服は、画像の「ホ」みたいな形の服です。
何かの草が生い茂っている様子でしょうか。

着物では、春の草花が「春草」としてモチーフになることが多いので、ここでは春草とします。
牡羊座(3月下旬〜4月下旬)生まれのきり丸のイメージとも合いますしね。

(『落第忍者乱太郎』7巻233p 参照)

コミックス7巻で土井先生がこの文様の入った服を着ていますね。

(『落第忍者乱太郎』44巻213p 参照)

さらにコミックス44巻で、おじいさんも着ていたので、忍たまの世界でポピュラーなデザインだとも考えられます。

(『落第忍者乱太郎』7巻12p 参照)

乱太郎は「全体に文様の入った服」だったのに対し、きり丸は腕から線のように文様の入っているデザインを好むのが大きな特徴です。
一部にだけ文様が入っていることですっきりとし、きり丸のシャープさを出すことに成功しています。
線のように文様の入った服だけで6着ほど確認できました。

(『落第忍者乱太郎』4巻23p 参照)

初期に見られた三角形の着物も、シャープさの演出だったのでしょう。
丸っこい体型のしんべヱと並ぶとより際立ちます。

(『落第忍者乱太郎』35巻18p 参照)

因みに、春草文様の裏は、コミックス35巻で女装用になっていることが明らかになりました。
美少年で女装が得意なきり丸だからこそ、裏地が女装に使える服を積極的に着ているのかもしれません。

2位 早蕨(さわらび) 37回

(『落第忍者乱太郎』58巻25p 参照)

2位は、シダ植物みたいな文様の服でした。
こういった文様は、早蕨(蕨の新芽)という分類になります。
これが個人的には、どうも不自然に感じるんですよね。

というのも、先述のようにきり丸って基本的には、「線のように文様の入った服」が好みだと思ってるんです。
だから、「全体に文様の入った服」であるこの着物をヘビロテするのが今ひとつ理解できなくて。

よっぽど思い入れのある文様なのかなあと思って読んでいたら、2つほど有力な説が浮かび上がってきました。

説1:自分が普段食べている草なのではないか

(『落第忍者乱太郎』45巻10p 参照)

コミックス45巻にこんなやり取りがありました。

「きりちゃん秋休みの間なにを食べてたの?」
「え〜そりゃあ…イナゴとかヤマドリゼンマイとか…」

ヤマドリゼンマイ。
ちょっとゼンマイの画像出しましょうか。

(『wikipedia ゼンマイ』参照)

これです。
着物の柄とそっくりじゃないですか。
蕨とゼンマイは厳密には違うのですが、一緒くたにされることも多い植物です。

子供って、自分の身近にあるものをモチーフによく絵を描いたりしますよね。
この作品における着物の柄も、それに近いと思うんです。
きり丸の初登場時は…

(『落第忍者乱太郎』1巻10p 参照)

小銭の柄の着物でしたしね。
だから、着物の柄に選ぶほど、きり丸は普段からヤマドリゼンマイを食べているのではと予想できます。
きり丸自身に悲壮感がないのは救いですが、その貧しい食生活を思うとちょっと切なくなります。

説2:土井先生からもらった服なのではないか

もう一つの説は、土井先生から譲り受けた服なのではないかという説です。

(『落第忍者乱太郎』61巻7p 参照)

元々きり丸は、戦に巻き込まれて、家と家族を失った孤児です。
忍術学園のない間は、土井先生のお宅に居候しています。
休みの間はずっと寝食を共にするわけですから、影響を受けるのも当然といえます。

(『落第忍者乱太郎』2巻88p 参照)

証拠として、コミックス2巻で土井先生が同じ早蕨文様の服を着ているんですよ。
そしてこの回以降、彼が袖を通している描写はない。
ということは、どこかで着物をきり丸に譲ったということも十分考えられます。

こちらの説なら、わざわざ「全体に文様の入った服」をきり丸が着ている説明として、より自然な感じがします。

説1よりも悲しくないですしね。
※公式キャラクターブックに記載があったため、こちらの説で確定しました(2018/3/19追記)。

しんべヱ編

残るは、しんべヱです。
寝巻きを含めて全13種類登場します。
服にはあまり頓着しないのか、3人の中では一番種類が少なかったです。

1位 ドットの花柄 80回

(『落第忍者乱太郎』6巻125p 参照)

最も多く着ていたのは、ドットで花弁を表現したような着物でした。
私の調べた範囲では、有名な文様ではないようなので、しんべヱのための特注品なのかもしれません。

直線や角を避けたデザインが、しんべヱの丸っこさやのん気さを強調しています。
しんべヱと言えばこれ!というくらいよく着ている服です。

2位 3枚の花弁 21回

(『落第忍者乱太郎』5巻20p 参照)

2位は、3枚の花弁がハンドスピナーのようになっている服です。
こちらもドットの花柄同様、オリジナルの文様かと思われます。

カタログに載っていないような文様を着こなすのは、しんべヱの家が貿易商で大金持ちなことの表れでしょうか。
既製品に満足できないのはお金持ちのおしゃれという感じがしますし、貿易商は珍しいもの好きなイメージがあります。
しんべヱ本人にそんなこだわりはなさそうですので、お父さんかお母さんが用意してくれたんでしょう。

(『落第忍者乱太郎』6巻124p 参照)

実際にコミックス6巻で、しんべヱのお父さんが同じ服を着ています。
このことから、お父さんがしんべヱの着物をあつらえた線が有力です。
福富家(しんべヱの実家)の家紋なんですかね。

乱太郎が代表的な2着をほぼ均等に着ているのに対して、1位と2位に大きな差があるのは、
しんべヱのずぼらな一面を示しているようで興味深いです。

(『落第忍者乱太郎』7巻13p 参照)

一応次点は、初期に8回だけ登場した七宝文様の服でした。
もともと「四方に広がる」の四方(しほう)がなまって「しっぽう」になったと伝えられています。
どこまでも広がるイメージが、縁起物として好まれます。

形で言えば、やはりしんべヱの丸い体型に合わせた柄を選んでいるようです。
既製品なのが物足りなかったのか、途中からフェードアウトしていきました。

まとめ

以上です。
乱太郎たちの私服から、一定の傾向が見えてきたのではないでしょうか。

あ、そうだ。
私服に関して、もう一つ非常に重要な法則があるのを伝え忘れていました。
それを最後に掲載しておきます。

(『落第忍者乱太郎』6巻30p 参照)
(『落第忍者乱太郎』7巻131p 参照)
(『落第忍者乱太郎』9巻120p 参照)
(『落第忍者乱太郎』10巻29p 参照)
(『落第忍者乱太郎』11巻97p 参照)
(『落第忍者乱太郎』13巻99p 参照)

分かりましたか?

(『落第忍者乱太郎』59巻167p 参照)

「おっさんほどかわいい柄を着る」です。

参考資料(URL最終確認は、2018/3/3)
『落第忍者乱太郎』1巻〜62巻 1986〜2017 尼子騒兵衛 朝日新聞出版
『落第忍者乱太郎公式キャラクターブック 天之巻』2011 尼子騒兵衛 朝日新聞出版
『日本・中国の文様事典』2000 視覚デザイン研究所・編集室 編 東京・視覚デザイン研究所
『すぐわかる 日本の伝統文様 —名品で楽しむ文様の文化—』2006 並木誠士 監修 東京美術
『きものの文様 —格と季節がひと目でわかる』2009 藤井健三 監修 世界文化社
『こども文様ずかん』2010 下中菜穂 平凡社
wikipedia ゼンマイ


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