『まんが道』に登場したキャラクターの喫煙率

2018/10/24 12:00

平成最後の秋。いかがお過ごしでしょうか。
次の元号が何になるかそわそわしていることと思います。

ただ!そわそわしていても仕方がありません。
こんなときは平成の一つ前の時代、昭和を味わって落ち着くに限ります。
昭和を存分に感じられるマンガ…、そう!『まんが道』ですね。

『まんが道』とは

『まんが道』は、藤子不二雄Aによって1970年から2013年にかけて複数の雑誌で連載された自伝マンガです。
マンガ家を志した二人組、満賀道雄(まがみちお)と才野茂(さいのしげる)が成功と挫折を繰り返しながら、職業マンガ家としての道を邁進します。
大御所作家が青春時代を過ごした昭和20年代が、親しみやすいタッチで描かれています。

満賀も才野も、どちらかといえば内気で純朴な青年という色合いが強いのですが、その分マンガに一途です。
特に感心するのは、学生時代からマンガ家を目指していることをオープンにしていることです。
シャイなタイプなら周りにマンガのことは隠しそうなものなのに。
しかもマンガ家という職業の地位がはっきりとは確立されていない時代に。
郵便局でもはっきり「マンガの原稿です」って言いますからね。

そして、大っぴらにすることで周囲の理解が得られたり応援してもらえる場面も多々あるので、大正解だよなあと思います。

なんとなくやる気が出ないときに読むと、非常に効果的です。
ひたむきさの風に当てられて、生きる情熱を取り戻すことができる。
そういう精神的なサプリメントとして、私は数年に一度読んでいます。

ただ、何回も読んでいることで、本筋とは関係のない、どうでもいいことにも目がいくようになります。

気になる喫煙シーン

(『まんが道』5巻24p)

それが「この世界の人たち、めちゃくちゃタバコ吸ってない?」です。

室内であれば、オフィスだろうと他人の家だろうと所構わず吸っています。
屋根の下に判定があり、条件を満たすと自動的に胸ポケットからタバコを取り出す仕組みなのでしょうか。
2018年の感覚から見れば、考えられないような光景が平気で描かれています。

印象だけで言えば、男性キャラクターのほとんどが喫煙者というイメージでした。
サンプル数の記載がないので参考程度なのですが、『JT全国喫煙者率調査』によると昭和40年代の男性喫煙率は約80%、女性喫煙率は約15%でした。
まんが道の描かれた昭和20年代も、ここまでではないにしろ半数以上の男性が喫煙していたと予想されます。
さすが昭和。

でも、イメージだけで語るのはよくありません。
実際にまんが道のキャラクターの中から喫煙者を探し出して、喫煙率を出してみたいと思います。

レギュレーション

1.『まんが道』に出てきたキャラクターの中で1コマでも喫煙している描写のあるものの割合を求める
2.『まんが道』本編で2コマ以上登場したキャラクター数を分母とする
3.『まんが道』本編で2コマ以上登場したキャラクターの中で、喫煙していたキャラクター数を分子とする
4.範囲は、『まんが道』の「あすなろ編」「立志編」「青雲編」「春蕾編」を対象とする

それでは実際に集計してみましょう。

1巻 4/38人

中央公論社版の『まんが道』の1巻では、38キャラ中4キャラが喫煙していました。
主人公の二人が学生で、出会う人の年齢層が低めなので、喫煙者は少なく押さえられています。

(『まんが道』1巻71p)

記念すべき最初の喫煙者は、いきなり未成年です。
満賀と才野がお金持ちの同級生に小説を書いてもらおうと頼むシーンですね。
この慣れた感じから、友達の前で見栄を張っているわけでなく、日常的に喫煙していることが伺えます。
インパクトがすごい。

確かに、未成年での喫煙者は今でも一定数(全未成年者の3%未満)いるようですが、こんな大っぴらに、ねえ。
タバコを吸うことで大人っぽくなるような感覚があったのでしょうか。

(『まんが道』1巻184p)

他には、満賀と才野に最初にマンガの仕事を持ってきた、高岡市政新聞のおっちゃんも喫煙者ですね。
この人、饒舌に喋ってはいますが、直後に逮捕されます。
1巻からショッキングなエピソードをどんどん盛り込んできますね。

2巻 6/27人

2巻は、27キャラ中、6キャラが喫煙しました。
1巻よりは割合が多くなっていますね。

(『まんが道』2巻262p)

それは、このコマでいっぺんに4人も喫煙者が現れたからです。
しかもまた未成年。

メガネのキャラは武藤といって、この後もちょくちょく出てきますが、満賀とは対極に描かれています。
高校時代のクラスでは中心的存在ですし、大学では親に大金を仕送りをしてもらいながら悠々と学生生活を謳歌します。
しかも、満賀が密かに思いを寄せていた女性とも後に交際します。
気に食わない読者も多いと思うので、牙沢という番長的なキャラに脅されるシーンを何度も読んで溜飲を下げましょう。

(『まんが道』2巻263p)

実はここで、満賀も喫煙する羽目になっています。
喫煙者にカウントしないといけないのはやや心苦しいですが、レギュレーション上仕方ありません。

(『まんが道』2巻234p)

新聞社の小間使いである日上(ひがみ)も喫煙者のようです。
藤子作品によくある、嫌な性格のやつに性格を表す名前をダイレクトに付ける手法が炸裂しています。

これは、入社試験に来た満賀を面接室に通すところですね。
私が引いてしまったのは、廊下でたばこを吸った上に、廊下でたばこを踏み消しているコマです。
「廊下が、汚れてしまうのでは?」と純粋な疑問が湧かずにはいられません。

武藤に続き日上も嫌なやつですが、こいつはあまり痛い目に遭っているコマがありません。
満賀が退職するときは、いい思い出にする感じで終わっていますが、私はもやもやが残ったままです。
さんざん満賀に意地悪した癖にさ。
廊下でたばこも消すし。

3巻 1/20人

3巻は、満賀と才野が思い切って東京にマンガを見せに行く場面が主です。
新たに現れた喫煙者は1人だけでした。

(『まんが道』3巻158p)

二人が飛び込みでマンガを持ち込んだ出版社の編集長ですね。
この人は、いきなりの訪問にも関わらず真剣にマンガを読んでくれて、激励のコメントまでしてくれた人です。
やっとまともな喫煙者が現れました。
いいぞ。

4巻 0/10人

4巻は一人も喫煙者が出ませんでした。
この辺りで新しいキャラクターの出現が緩やかになってきます。
物語が、離陸から安定飛行の段階に入りつつある印ですね。

5巻 1/5人

(『まんが道』5巻304p)

5巻では、新聞社の先輩がタバコを吸っています。
満賀がラジオ欄を間違えて、新聞社中が抗議の電話に追われたことを怒っている場面です。
一発で嫌いになれる顔とセリフ。

現代の感覚で見ると、「オ…オフィスでタバコを…」と戸惑ってしまいます。
全力で空調を回して欲しい。
昭和20年代はこれが当たり前だったんでしょう。

この人は『まんが道』の喫煙者で、二人だけいるレフティの内の一人です。
貴重ですね。
もう一人は、武藤の家にいた少年です。

(『まんが道』5巻18p)

あと、タバコではないですが、電車で普通にお酒を飲むシーンもありました。
これも「新幹線じゃないのに!?」とうろたえてしまいました。
電車に関しては、ほんの100年ほど前には履物を駅のホームに脱いで入っていた人もいるくらいなので、時代の移り変わりが激しすぎるのかもしれませんね。

6巻 2/9人

6巻では、新しいキャラクターが9人登場し、2人が喫煙者でした。

(『まんが道』6巻24p)

そのうち一人が、『冒険王』という雑誌の編集者、東山さんです。
満賀と才野が上京してからかなりお世話になる人で、食堂で天丼をご馳走してくれたり、金欠を察して早めに原稿料をくれたりします。
でも、他人の家でめちゃめちゃタバコを吸います。

(『まんが道』6巻235p)

もう一人は、富山から東京へ向かう電車で居合わせた薬売りです。
富山は薬売りで有名でしたからね。
電車の中で堂々と喫煙しています。

7巻 1/5人

(『まんが道』7巻294-295p)

7巻は、『漫画少年』の編集長、加藤さんが唯一の喫煙者でした。
何本ものマンガを雑誌の看板作品に育て上げた、名編集者の呼び声も高い人物です。
このシーンは、マンガの神様、手塚治虫が満賀と才野を食事に誘ったところです。
見開きを使っての喫煙は、豪華ですね。

加藤さんは複数回登場しますが、ここ以外でタバコを吸っているシーンはありません。
後に『漫画少年』の経営が傾いて以降は、頬のやつれたような顔で描かれるようになるので、悲壮感があります。

8巻〜14巻 0/16人、1/11人、0/13人、1/11人、0/3人、2/6人、0/4人

8巻から14巻は、一人も新たな喫煙キャラが登場しない巻が多いので、一気にいきます。
キャラクターが増えた割に喫煙者が殆ど増えませんでしたしね。
64キャラクター中、わずかに4人だけです。

(『まんが道』11巻135p)

印象的なところでいうと、11巻では、めちゃくちゃ怖い『少女クラブ』の編集者、角野さんがやってきます。
最初は優しい新人の女性編集者が担当していたのですが、満賀と才野の原稿の進みが芳しくないため、厳しい催促が持ち味の角野さんが担当になりました。
マンガ描いてる後ろでタバコ吸われたら嫌だろうなあ。
気配を如実に感じますからね。

(『まんが道』13巻193p)

13巻では、新しい編集者、山岸さんから読み切りの仕事を依頼されます。
仕事を抱えすぎて原稿を大量に落とすという失敗もありましたが、何だかんだで新しい縁は増えていきます。

まとめ

以上です。
全体を通した喫煙率は、約10.6%でした。
178キャラクター中、19キャラクターがたばこを吸っていました。

一人も喫煙者の出てこないマンガも多い中で19キャラは多い気もしますが、全体としての喫煙率は、予想よりもかなり低くなりました。
実際、平成29年の日本人の喫煙率17.7%(『平成29年 厚生労働省 国民健康栄養調査』)よりも低い数値を叩き出しています。
「この世界の人たち、めちゃくちゃタバコ吸ってない?」だなんて、完全な濡れ衣でした。
まんが道、すみません。

男女別では、男性キャラ約13.1%(145キャラ中19キャラ)に対し、女性キャラは0%(33キャラ中0人)でした。
アジア特有の、女性の喫煙者が少ない傾向は、ちゃんと反映されていますね。

でも、なんでそんなに喫煙者が多いイメージを持ってしまったんでしょう。
衝撃的な喫煙シーンが多く印象に残っているからでしょうか。
気になってさらに調査したら、あることに気が付きました。
そう…。

(『まんが道』13巻154p)

喫煙キャラ19キャラ中8キャラが編集者な上、編集者の喫煙シーンが頻繁にあるからです。

参考資料(URL最終確認は、いずれも2018/10/22)
・『まんが道』1〜14巻 藤子不二雄A 1996年 中央公論新社
・『国民健康・栄養調査』https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
・『JT全国喫煙者率調査』http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
・『OECD Data Daily smokers』https://data.oecd.org/healthrisk/daily-smokers.htm

まんが道のマンガ情報・クチコミ

まんが道/藤子不二雄(A)のマンガ情報・クチコミはマンバでチェック!25巻まで発売中。 「2014年手塚治虫文化賞」を受賞。


せと ゲノム

どうでもいいことに着眼するライター。最近はパワーワードに凝っている。