まるで読める浮世絵、塩川桐子『ワカダンナ』は古典落語のような素晴らしさ

2018/11/28 12:00

マンバ通信編集部がおすすめの1巻を紹介するコーナー。今回はドッグナマコがおすすめの1冊を紹介します。といっても、1巻ではなく読み切りのコミックすが。

今回、紹介するのは塩川桐子さんの『ワカダンナ』です。

(『ワカダンナ』塩川桐子/リイド社)

江戸の街に暮らす人々の悲喜こもごもを1話完結モノの短編集で、表紙の和やかさに惹かれて手に取ったのがきっかけでした。

まずページをめくって「ワッ!」と思ったのが塩川さんの絵のスタイル。

(『ワカダンナ』萩の宿より)

見ての通り「浮世絵」タッチ。しかし、ちゃんとマンガらしい表情やコマ割にも馴染んでいて、全く違和感なく読めます。この作品をきっかけに浮世絵タッチのマンガについて調べてみると、杉浦日向子の『二つ枕』という作品も浮世絵タッチで描かれているそうで「こんな世界があるなんて知らなかったヨ!」と、衝撃をうけました。

もしかすると自分がこれまで知らなかっただけで、塩川桐子さんはかなり大御所の作家さんなのでは? と検索してみるも、出てくる作品は1〜2冊程度。しかも作家のプロフィールもほとんどない……うーん気になる。渋い作品描いてるけど、実は平成生まれなんてこともあり得る。

もちろん、素晴らしいのは絵だけじゃありません。

ストーリーだって秀逸。人情モノや色恋沙汰、怪談風もあったりと、バラエティに富んだ内容がちょうどいい塩梅で描かれていて、その起承転結の仕上がり具合は古典落語にも近い印象を受けます。(大昔、「ギミアぶれいく」という番組で滝田ゆうさんの落語アニメをやっていたけど、もし今落語アニメやるんだったら塩川さんの絵で観てみたい気も……)

私の拙い解説を長々としても良さが伝わりにくいかと思うので、ここでこの本の表題作にもなっている「ワカダンナ」の内容についてちょっと触れてみたいと思います。

(鰹節を抱えて店へと戻る小僧・長松の姿から物語ははじまる)

この作品に登場する「ワカダンナ」とは、小間物屋・青羽屋の跡取り福太郎のこと。商人の息子ですが、商売っ気や跡継ぎとしての気概もあまりないようで、自分の身なりにも無頓着。流行遅れの長羽織をぞろびかせ、街中を歩き回る福太郎の「道楽」を阻止しようと、父である大旦那は小僧の長松を見張りとして付き添わせます。

……その「道楽」というのがコレ。

(冒頭で長松が抱えていた鰹節はネコたちの餌だった)

とにかく身寄りのない捨てネコをどうしてもほっとけない! この日も捨てられかけていたネコを見つけてしまった若旦那。長松は必死で説得しますが、そんなことはおかまいなしと強引に持ち帰ろうとします。

(ネコのためなら逆ギレだってカマす若旦那)

これじゃあ大旦那に面目が立たないと長松も必死に反撃。「せめて今日連れて帰るネコの食い扶持分くらいは、稼いで帰りましょう!」と、若旦那が思いを寄せる長唄の君香師匠の元を訪れ、「なんでもいいから買ってくれ」と懇願。しまいには若旦那の不甲斐なさを涙ながらに嘆く始末。

そんな長松のようすを見かねた君香は、若旦那がネコを拾うきっかけとなった出来事を打ち明け、「誰よりも男らしい、立派な人だ」と諭します。

若旦那がネコを拾う理由もかなりグッとくる話なんですが、この後にくる展開もすごくいい! 気になる人は『ワカダンナ』を手に取ってもらい、この話の成り行きを見届けて欲しい。

実はこの話、塩川桐子さんが2017年に出した単行本『差配さん』にも繋がってます(と、いうのも「ワカダンナ」は『差配さん』のスピンオフとして描かれた作品とのこと)。こちらは面倒見のいい親分ネコ「差配さん」を主人公とした1話完結ものですが、そこに『ワカダンナ』のその後もチラッとでてきますので、ぜひ。

『差配さん』もな〜〜〜〜〜〜、これまためちゃくちゃいいんです〜〜〜〜〜〜〜〜。差配さんはネコであってネコでない、もしかすると人間以上に情にあふれた最高のネコなのではっっっっって話がいっぱい入ってます。

最初の方でも書きましたが、塩川桐子さんの描く作品は古典落語に通じる趣のある話ばかりです! できたら腕のある落語家さん演ってもらいたいくらい激推しなので、よろしくお願いします〜!!!

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ドッグナマコ

ドッグナマコです。とにかくトイレの近い編集者です。