『世界は寒い』は2巻完結の長編マンガだ

『世界は寒い』は2巻完結の長編マンガだ
高野雀さんの『世界は寒い』が完結した。2巻で。
えー、2巻で!? って思いましたけども、その話はまたあとで。
まずはこの素晴らしい作品について語らねば。
 
『世界は寒い』(高野雀)祥伝社から
 
このマンガのストーリーをざっくり書きますと、フードコートでバイトしてる女子高生と同年代の6人が、置き忘れた紙袋の中に拳銃を見つけるところから始まります。
 
 
強いフックのある出だしじゃあないですかあ。そして。
 
 
女子高生が銃でひとを殺すなんて誰も思わない
これってチャンスなんじゃないの?
殺したい奴が居ない人間なんか居ねえだろ?
と続きます。
弾丸1発を各自が持つことで、彼女たちひとりひとりが「殺したい奴」をいつでも殺すことができる自由を手に入れる。自由を手にした彼女たちは考え、行動を始める。
 
で、ここからは、6人の女子高生それぞれのバックグラウンドストーリーと「殺したい相手」の存在が語られていきます。配信やってる子や、部活で故障した子、去っていった父親を憎む子、などなど6人のキャラがまたひりひりするバランス。
わたし、ただでさえオーシャンズ11とか七人の侍みたいな個性豊かなメンメンのお話にめっぽう弱いので、えーとこの話もまた急所にあたってひいひい言いながら読みすすめることになりました。
 
わたしの推しは、細野様。
ひとりだけ弾丸を持たず銃を管理する進学校の生徒。目が冷たくて最高です。
 
とか
しびれるわあ。
 
いや、しかし、プロットでこんなに引き込まれたの久しぶりですね。
1巻が終わった時点で、物語がどちらの方向に舵を切るのはまるでわからなかった。
 
ところで。
これまでの高野雀さんの過去作はどちらかというとプロットよりも、丁寧に紡がれたディティールにこそ魅力が詰まっているものだったと思うんです。
『さよならガールフレンド』(高野雀)祥伝社
 
たとえば「さよならガールフレンド」という紛れもない傑作短編集があるのですが(これ読んでなかったら、いますぐ買ったほうがいいですよ)、細部にいろいろ宿っちゃってます。
 
そういえば高野さんは、このツイートがちょっと前にバズってました。
 

 
枠で区切ったら時間が生まれる、というマンガという形式のワンダー。
高野さんのマンガには、このマンガという形式の持つワンダーが巧妙に使われていて、ワーていう感じになります。映画見てるときに、うわ〜なんかこの人、映画がうまい〜、みたいに思うアレですね。小説とか絵本とか見てても思わないですか。その形式でしかできない表現がドンピシャで使われている感じ。
そのドンピシャなマンガならではの表現の数々に、今回はプロットの妙も相まって、えらいことになってるという感じです。さあ読みたくなってきましたか。
 
 
しかし、冒頭にも書いたけれど、このマンガが2巻で完結したことには驚きました。作者自身がその顛末をあとがき的に描いていましたが、これは長いマンガとして展開できる(そしてそうしようとしていた)作品だったのだろうなあと。
 
僕自身は短いマンガが好きなんです。短編も好きだし、少ない巻数で終わるマンガも大好物。
 
だけど、セケンイッパンで人気があるマンガって結局のところ長いマンガなんですよね。
1巻完結作品はカルチャー界隈で人気が出たりはしますが、マスで人気が出るマンガの圧倒的多数は巻を重ねていったマンガなんですよね。
 
で、このマンガは、これまで短めの作品を描かれていた高野雀さんが気合いじゅうぶんに長編に挑んだ作品だと、勝手に見ておったのです。踏み込んできたなーと。
そして、予想に以上に、めちゃくちゃおもしろい。だから、2巻で完結にすごくびっくりしてしまった。こんなにおもしろいのに、2巻で終わるんか! と。
いや、2巻でも、2巻目はすごい分厚いんで。そして物語が高度に圧縮されてパンパンに詰め込まれてるので、情報量が半端ない。2巻で完結だけど、もうこれは長編と言っていいんじゃないかな! 
言い過ぎか。言い過ぎでもいいか。
 
電子書籍版のおまけページには、描かれるはずだったページのようなものが載っていてもう脳内でながーいストーリーを補完が始まってしまうしな。
 
まあ別に個人的にはすごく長い作品を読みたいってわけではないのですが、この作品が広く読まれるものになってほしいなあと思っていたんですよね。
だから、えーと、これ2巻で完結したけど広く読まれればよいわけで、みんな買おうぜというお話でした。
試し読みしてくんろ。
 

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