おい、新作アニメ映画の前売券買っとけよ!『SLAM DUNK』豊玉高校について語り尽くした

2021年1月7日に、バスケ漫画の金字塔として輝く『SLAM DUNK』の新作アニメ映画化の制作が発表されました。『SLAM DUNK』と言えば、90年代の『週刊少年ジャンプ』を牽引して人気絶頂のままに完結した漫画であり、レジェンドオブレジェンドですから、この記事を読んでいる人にその概要について改めて説明する必要は特に無いことでしょう。ただ、そこまでの作品なのにアニメについては完結まで作られておらず、インターハイへ向かう前までで終わってしまっていました。

このたび新作アニメ映画が作られると発表されたことで、『SLAM DUNK』という漫画の最後の試合にして最高の面白さだったと今なお語り継がれる、インターハイ2回戦・山王工業戦を多くの人が期待していることでしょう。しかし! インターハイで行われた試合は山王工業戦だけではありません! みなさん、湘北高校の全国デビューとなったインターハイ1回戦・豊玉高校戦のことを忘れてはいませんか!? たしかに『SLAM DUNK』の新作となると、世間の期待はほとんどが山王工業戦に向いてるのでしょうが、豊玉高校だって湘北高校の全国大会最初の壁となって立ちはだかったのですよ! じゃあ豊玉高校戦は新作アニメ映画で描写されるのかと言うと、正直カットやダイジェスト扱いになってもやむを得ないかなとは思っているのですが……。

そんなわけで、新作アニメ映画で描写されるかどうかもわりと怪しいため、今後語る機会がどれだけあるのかも怪しい名門・豊玉高校について、せっかくなので個性豊かなキャラクター達をそれぞれ紹介していきましょう。

 

・豊玉の精神的支柱、岸本実理

『SLAM DUNK』新装再編版15巻35ページより

初登場は他の豊玉高校メンバーよりも早く、インターハイが始まる前の大阪予選決勝が行われている「#188 彦一、大阪へ帰る」です(そのため、岸本だけはアニメにも登場しているとのこと)。彦一の元舎弟である大川輝男(通称「テルオ」)は「うちのエース」「本当のバスケを教えてくれた」などと紹介していました。しかし、後者はともかく、前者については岸本はあくまで精神的支柱とかチームリーダーといったところで、湘北高校戦の試合中には南へハッキリと「お前は豊玉のエースやぞ!!」と活を入れています。なので、岸本がエースだというのは完全に嘘です。テルオが彦一への手紙で「1年でただ1人レギュラーに選ばれました」と書いていたのも嘘でしたし、テルオには虚言癖が見受けられますね……。信用ならない奴です。1年生で名門校のベンチ入りしているのは凄いのかもしれませんが、ベンチ入りまでしておきながら岸本達が金平監督を嫌っているという内紛を全く知らなかったようですし、岸本達もなんとなくテルオの調子コキっぷりから信用ならなさを感じていたのかもしれません。

テルオの話はさておき、岸本の話に戻りましょう。陵南の仙道を強く意識するも、次のページで仙道は釣りをしながら大アクビをしています。さらに、同じ回の大阪予選では大栄学園の土屋にも見事なまでに翻弄されており、初登場回で二度もスカされるというなかなかの空回りっぷりを披露します。

岸本の二度目の出番は、湘北高校メンバーがインターハイが行われる広島へと向かっている新幹線の車中でのことでした。湘北高校メンバーが1回戦の対戦相手である自分達の話を全くしていないことに因縁をつけて、木暮先輩(メガネ君)の肩に後ろから腕を掛け、さらにはそのまま首を絞め上げるという横暴を見せます。

この時に桜木花道に付けられたあだ名は、長髪を後ろで束ねていることから「チョンマゲ」。喧嘩っ早くてすぐに相手を挑発するような性格のようです(長髪なだけに)。次の回では、トーナメント表の前で再び出くわして海南大付属の牧さんと対等ヅラしてタメ口をきいてイキるも、牧さんには全く覚えられていないという、合計三度目の空回りを見せてくれます。これは恥ずかしいやつです。新幹線の時こそメガネ君を締め上げたり花道の頭を掴んだりしていましたが、あまりの恥ずかしさに手も出せずに黙ってプルプルと震えるのみ。

いざ試合が始まったら、週刊バスケットボールでは総合評価Aランクとされている(※湘北高校はCランク)強豪校を引っ張るチームリーダーとして、宮城リョータのパスをカットしたり桜木花道を抜いてシュートを決めたりと実力を見せつけてきたのですが、桜木にわざとぶつかったりセンターの岩田に赤木剛憲(ゴリ)へのラフプレイを示唆したりと、読者にとってはとても分かりやすい「悪役」のまま。試合が進むにつれて、南の不調とそれに伴う豊玉の失速とともに苛立ちを増していき、タイムアウト中にはチームメイトの南へ掴みかかったり、ついには初対面時からずっと関係性の悪かった金平監督にも当たり散らしてブン殴られてしまいました。いったい何人に牙を剥いとるねん、狂犬かよ。

ちなみに、岸本はこれまで散々あちこちに当たり散らしておきながら、仙道・土屋・牧には完全にスカされ、木暮や桜木にも掴んだりぶつかるまでで、南や岩田はチームメイトなので当然ながら噛みつかれることもなく、金平監督に至ってはブン殴られたくせに「名ばかりでも一応監督はおらなあかん」とか小理屈を持ち出して反撃をしていません。岸本、喧嘩っ早くて暴力的なイメージもあるけど、実際に「殴る」までの一線は越えられない、本物の喧嘩は知らないイキり野郎の可能性がわりとあるんですよね……。湘北高校の方がよっぽど殴り殴られを経て今に至っている暴力的なチームですよw 残り2分で10点差で負けているというかなり追い込まれた段階になって、恩師である北野先生がいつも言っていた「バスケットは好きか…?」という大前提をようやく思い出したものの、奇跡は起こらず。涙を流しながら会場を後にしました。岸本の、そして豊玉高校の敗因は、もっと早い段階でゲームそのものを楽しむという基本に立ち返ることでしたし、もっと言うともっと早い段階でちゃんとチームメイトを殴って、一度バラバラになったチームをあらかじめまとめあげておくことだったのではないでしょうか。そう、我らが湘北高校のように……。

『SLAM DUNK』新装再編版15巻335ページより

 

・大阪予選得点王にしてエースキラー、南烈

『SLAM DUNK』新装再編版15巻38ページより

豊玉高校のキャプテンであり、岸本と並ぶ豊玉高校の柱ですが、喧嘩っ早く粗暴なイメージのある岸本とは対称的に、見た目もプレイスタイルも基本的にはスマートな印象の選手です(※ただし桜木が付けたアダ名は、その髪型から「カリメロ」)。そして、岸本も認める豊玉の「エース」でありながら、それと同時にもう一つの肩書きも持っています。それが、「エースキラー」。湘北高校が県大会で苦戦した翔陽高校と1年前のインターハイで対戦した時に、翔陽高校のエース・藤真へヒジを入れて退場させて、その後に豊玉が逆転勝ちしたことから呼ばれ始めたそうです。海南大付属の牧さんも知っていたのならあらかじめ教えといてくれれば良かったのに、「流川、あいつには気をつけろ」という具体性皆無のアドバイスしかしてくれなかったこともあり、前半11分を過ぎたあたりで流川は目にヒジを入れられてしまいます。牧さんも「流川、あいつはエースキラーと呼ばれてて、翔陽の藤真はあいつにヒジを入れられて退場したんだ」くらい具体的な情報をくれてれば良かったのですが、もし南がヒジを入れなかったら牧さんの格が落ちてしまうので仕方ないですね! 牧さんは試合中も、隣の席の清田が聞いているのを見越した上で「…気をつけろ流川…」「あいつが何て呼ばれてるか知ってるか?」とギリギリで言葉を止めておき、実際に南がヒジを入れるまでのタイミングを見計らっています。なんという計算高さ!これこそが神奈川No.1プレイヤーであり王者・海南大付属を率いるキャプテン・牧紳一ですわ!

話が逸れましたが南です。エースキラーという汚名を背負ってまで勝利を求めた南ですが、尊敬する北野監督の教えであるラン&ガンという「手段」でベスト4へ進出して強さを証明するという「目的」を果たすはずだったのが、目的ありきになってしまい、ラン&ガンはバスケットを楽しむための教えだということを忘れていました。エースキラーのくせにエース・流川をキルできなかったことで不調に陥ってしまい、ついには氷のような目をしてヒジだけではなくヒザまで入れようと目論みます。しかし、ギリギリで北野監督の言葉を思い出したため、豊玉のヒジ&ヒザ作戦は未遂&自滅。気絶中に夢の中で北野監督へ罪の告白をして、現実の北野監督による手当と優しい言葉をかけてもらい、想像と現実のダブル北野のおかげで善性を取り戻し、連続3ポイントで追い上げるも、時すでに遅し。ヒジを入れる奴には勝負の女神は微笑みかけてくれませんでした。勝負は非情なものです(ヒジだけに)。

『SLAM DUNK』新装再編版15巻296ページより

ちなみにこれは、豊玉戦の観客席に描かれている「隣席に座っている観客に肘を入れてる奴」です。観客席にこいつが居るのを知っていると、エースキラー南がやっている行為を「所詮は観客がやってるのと同じレベルの行為」とさらに貶めることができます。エースキラー南のヒジの話をする時に、ヒジ話の幅、言うなればヒジの可動域を広げることができるので、みなさんも活用してみてください。

・ラン&ガン・バスケットの名将、北野(元)監督

『SLAM DUNK』新装再編版15巻310ページより

豊玉高校の元監督。高校生の部活動でやれることには限りがあると割り切り、オフェンス8にディフェンス2という割合の練習による超攻撃的バスケットの「ラン&ガン」で大阪予選を制し続けるも、全国ベスト8の壁を破れなかったことの責任を取るような形で、岸本・南が1年の時に監督を辞めることに。安西監督と同じような選手に慕われる名将っぽさを醸し出していましたが、岸本・南のように彼を慕っていた選手が一時的に闇堕ちしてしまうのも安西監督と同じ(スパルタ指導で逃げられてまるで成長していないまま薬物使用からの事故死した谷沢や、せっかく赤木や木暮のような良いチームメイトが居ながら2年間も不良グループの姫をやってた三井寿を思い出しながら)。まぁ岸本と南の闇堕ちは退任後のことだから仕方ないですが……。南がエースキラーと呼ばれたあたりですぐ北野さんが彼のメンタルケアをしてくれてたら、ついでに岸本のイキり癖も戒めてくれていたら、湘北戦の結果も変わっていたのかもしれませんね……。

ちなみに、その安西監督とは大学の同期生とのことで、豊玉戦の後に再会して2人で鉄板焼き屋で広島風お好み焼きっぽいものを食べながら話していました。おいおい、神奈川県予選の時には入院もしてた安西監督にあまり脂っこいもの食わせないでくれよ!

 

・湘北戦時点では33歳!若いぞ! 金平監督

『SLAM DUNK』新装再編版15巻294ページより

豊玉高校の現監督。南には首を締められ、岸本には怒鳴り散らされ、あげく自分も岸本をブン殴って当たり散らすという、これらが全て試合中のこととはとても思えない、豊玉高校の内紛の要因のほぼ全て。全国ベスト8の常連である名門・豊玉高校の監督に31歳という若さで抜擢されるほどですから、きっとそれなりの実績はあったのでしょう。ですが、初顔合わせの時点で岸本と南の地雷を全力で踏み抜きます。

まず名前の次にいきなり「31歳!!若いぞ!!」と、婚活中のアラサー女子のように31歳という年齢を問答無用で若いんだぞとアピールしてきます。昔読んでいた時は豊玉部員が「31歳(だってよ!)!!(おじいちゃんだった北野監督と比べて)若いぞ!!」という意味で言ってるのだと思っていましたが、よくよく考えてみると初対面の豊玉部員が金平監督の年齢を知っているわけがないし、うら若き高校生からしたら31歳という自分の倍近くある年齢は「おっさん」です。若くないです。それを踏まえると、この「31歳!!若いぞ!!」という台詞は金平監督が言っている自己紹介だと捉えられますし、この第一声の時点で早速スベっているのがよく分かります。その後も、若さアピールと関連してヤンチャな高校生達にナメられないようにと「ビシビシしごく」とか一発カマしたのも、北野先生を軽んじる言葉を入れていたことから岸本と南をピキらせます。そして最後はラン&ガンを全否定です。スゴイですよ、自己紹介でホップ・ステップ・ジャンプと三段跳びで綺麗に地雷を踏み抜くなんてそうそう狙ってもできませんよ……。

その後も、2年間も指導をしていながら、チームの中心選手である岸本や南の心の支えが北野元監督の「ラン&ガン」という教えであることをずっと軽んじたままだったのは失敗でした。残り2分になってようやく岸本や南は本来の実力を取り戻せましたが、それも結局は北野元監督のおかげで、金平監督はというと北野元監督が南を手当して言葉をかける横で無言で突っ立っていただけです。復活した南の連続3ポイントには涙を流して絶叫していましたが、それはあくまで金平監督から教え子である南への熱い想いであって、岸本や南にとっては結局最後まで「北野監督の教えを否定する、試合中にブチ切れたクソ監督」のままインターハイが終わり、ブチ切れた時に話していた通りに期限切れでクビになったのでしょうね……。金平監督の再就職がうまくいったことを願っています。

 

・豊玉レギュラーの影の薄い2人、矢嶋京平・岩田三秋

彼らについては申し訳ありませんがあまり語るところがありません。センターの岩田は、湘北・赤木の方が実力的に上のため前半に何度かやられ役になって、その後は人数をかけた徹底マークやラフプレイで赤木に対抗していました。矢嶋は、この試合では湘北のシューティングガード・三井の出番が少なめであまり目立たなかったため、矢嶋もそれと比例して目立った出番は少なかったです。まぁ三井があまり目立たなかったということは、矢嶋が三井に仕事をさせなかったとも考えられますので、きっと漫画に描かれていないところでそれなりに頑張っていたのでしょう。

・豊玉レギュラーで唯一の2年生、板倉大二朗

『SLAM DUNK』新装再編版15巻82ページより

板倉と言えば、岸本と並んで読者の多くに「これぞ悪役・豊玉高校」として強く強く印象付けられている、徹底的な「煽りカス」っぷりでしょう。なんせ、初登場時の台詞からして「ブッ殺すぞ!?」ですから(※花道に「チョンマゲ!!」と茶化されていた岸本を庇うために登場した)。その後も「ドチビが……!!」「ボン!!(立てた親指を下へ向けながら)」「ええかげんなことぬかすなコラ!!」「アホウ、おのれは空けてへんわい!!」「おうおうチビの相手もラクやないで!!ヒザつかんとカオが見えへんやんケェ!!」「ボボォン!!(立てた親指を下へ向けながら)」「どんどんどんどん入れまっせェ!!」と、主にポジションが同じ宮城を煽りまくり、徹底的にヒールとしての役柄を全うします。板倉のラフプレイに苛立った宮城は、ついには板倉へ向かって拳を振りかぶるところまで行きます。彩子の声を聞いてギリギリ踏みとどまって寸止めをしましたが、もし宮城があのまま振り抜いていたら、良くて退場、最悪だと没収試合まであり得たでしょう。そう思うと、湘北高校を一番ギリギリまで追い込んでいたのは豊玉・板倉だったとも言えるのではないでしょうか。

もちろんただ煽るだけではなく、バスケットの実力もあることは描写されています。湘北高校ベンチから「顔のわりにきれいなシュートフォーム」と評された3ポイントシュートもあり、大阪予選では1試合平均25点も取って、個人得点ランキングでは南・岸本に続き3位に入っています。しかし「顔のわりに」ってのも酷い言い草ですねw 湘北高校のシューターは三井や流川など美形が中心だからか、顔の良さとシュートフォームの綺麗さは比例するものだと刷り込まれているのでしょうかw

板倉の特異な所は、豊玉レギュラーで唯一の2年生であり、岸本や南のように北野先生の教え子、いわゆる「北野チルドレン」(※筆者の造語)ではないことです。北野先生は2年前に退任しているため板倉はおそらく面識も無く、岸本や南のように北野チルドレンとしてラン&ガンでベスト4になろうという、断固たる意志があるわけではないのです。豊玉のバスケであるラン&ガンが合っていたから2年生にしてレギュラーになり、さらには大阪予選の個人得点ランキング3位にもなれたのでしょうが、言ってしまえば「名門・豊玉高校に入って普通にバスケを頑張っているだけ」だし、ガラが悪めな豊玉高校の先輩や校風ともたまたまウマが合っていただけなのでしょう。北野チルドレンのようにラン&ガンでベスト4になるという明確な目標があって、その目標へと向かうためにはラフプレイという手段も辞さないというわけではなく、ただ勝つために煽るべき対戦相手はしっかり煽る、天性の煽りカスだったわけです。岸本や南はバスケットを楽しむという初心を忘れていましたが、板倉はたぶんバスケットを楽しんでいる心を持ったままに宮城を煽り続けていたと思います。

『SLAM DUNK』新装再編版15巻217ページより

あくまでヤスの推測ではありますが、高校からポイントガードにコンバートされたというのも、板倉の実力の高さと先輩達の期待を感じさせられます。豊玉高校理事長曰く、充実した設備を用意されて海外遠征もしているほどの全国大会常連の強豪校ですから、きっと岸本世代にもポイントガードをしていた選手は居ることでしょう。それなのに、1学年下の板倉をわざわざポイントガードへとコンバートしてまで起用しているのです。どれだけ板倉の実力が認められていたんだって話ですよ。また、先輩を1人押しのけて2年生にしてレギュラーになっているのに、先輩達に囲まれて臆することなく、むしろムードメーカーとして豊玉高校を盛り立てています。きっと、実力だけではなく人間性も認められていたことでしょう。現状のチームの柱は岸本と南だということは金平監督も認めていましたが、来年は板倉がキャプテンとなりチームを引っ張ることになるのです。お前は豊玉の柱になれ!

板倉が次期キャプテンとしての器であることを示すのは、その観察眼にもあります。後半、怪我をしたままプレイしている流川とのマッチアップで絶不調に陥った南へ、板倉は「南さん…あんまり考え過ぎんといつものように…」と声をかけます。タイムアウト中のトラブルでチームがバラバラなことを悟りながらも、不調の南をなんとかフォローしようという声かけに、板倉の本来の人間性が見えてきます。さらには、南が流川にもう一発やらかそうとする直前には、「氷のような目、何をやらかす気や…」と、板倉だけが南の「覚悟」に気付いていたのです。

『SLAM DUNK』新装再編版15巻92ページより

また、このシーンを見てください。先輩である矢嶋を、普通に「矢嶋さん」とかではなく「ヤジさん」と呼ぶというこの距離感ですよ。適度な距離の近さと、それでいてしっかりと先輩後輩として上下関係は守っているのを感じさせられます。これは良い後輩として可愛がられていることが想像できますよね。きっと豊玉高校バスケ部のみんなでカラオケに行っても、きっと「どんどんどんどん歌いまっせェ!」と先陣を切って1曲目にアップテンポな曲を入れてくれますし、南が歌いだしたら「あの人にマイク握らせたらあかんでェ!」と、率先してタンバリンやマラカスで盛り上げてくれることでしょう。大阪という土地柄、練習帰りにみんなでお好み焼き屋に行ったりすることもあるでしょう。南が南龍生堂という薬局の息子なのですから、岸本あたりは実家がお好み焼き屋かもしれません(後ろで長髪を束ねているのは実家の飲食店を手伝いしている時の習慣から来ているのかも)。その時も、きっと板倉が「どんどんどんどん焼きまっせェ!」「ボボォン!(お好み焼きをひっくり返す時の掛け声)」と鉄板を仕切ってくれることでしょう。もはや1チームに1人は板倉が居てほしいくらいですね!

主人公チームである湘北高校視点で読むと板倉はたしかに「煽りカス」ですが、板倉のはあくまでチームを鼓舞し対戦相手を挑発して試合を有利に進めるための「ビジネス煽り」。最終的にはチームメイトや監督にまで牙を剥いたイキりチョンマゲの岸本とは違うのです。先輩には基本的に敬語ですし、煽った相手の宮城にも審判が見ていれば「スッ…スマン、大丈夫か君!」と柔軟に取り繕った態度を見せます(そんな態度がまた宮城の怒りに火を点けたあたりは、やはり煽りの才能がありますがw)。

板倉と宮城の因縁の話でもう1つありますので、こちらの画像をご覧ください。

『SLAM DUNK』新装再編版15巻39ページより

開会式後に湘北高校と豊玉高校がフルメンバーで初顔合わせをした時の場面ですが、注目してほしいのは板倉の表情です。「おっとと!」の時は頬に1つ、顔の前に2つも汗を垂らし、次の「見えんかったわ」の時も顔の前に1つ汗を飛ばしています。この4つの汗から、「板倉には別に悪気がなかった」というガチ感と、咄嗟の状況でも相手の身長のコンプレックスを突く天性の煽りカスとして生まれ持った無神経さが感じ取れませんでしょうか。

『SLAM DUNK』新装再編版14巻47ページより

読者は「#187 1年坊主」で桜木が名朋工業の森重にわざとぶつかりに行ったのを見ているため、板倉もわざと宮城にぶつかったのかと疑ってしまいますが、ぶつかってしまったのは本気のミスだったのではないかと私は思っています。そして、ぶつかられた瞬間にすぐあの伝説的な「切符買っとけよ」という一捻りしたオシャレな煽り台詞が出てくる宮城も、主人公チームだから許されているけどなかなかの煽りの才能を持った存在だと思いますw

ちなみに、この「切符買っとけよ」の舞台は、広島市中央公園の広島県立総合体育館前に実在します。

SLAM DUNKの聖地と言えば、アニメのOPに登場する江ノ島電鉄鎌倉高校前踏切があまりにも有名ですが、広島に行った時にはこちらもぜひ聖地巡礼してみてください!

ここまで長々と書いてきましたが、豊玉高校の話はいくらでも広がるもので(主に板倉のおかげで)、友人の小黒唯さんのYoutubeチャンネルでトーク配信をした時にはほぼ豊玉の話だけで4時間半も語り続けることになりました。今回書いたのは私の感想が中心になっていますが、他の友人達からもいろいろな視点が持ち寄られて延々と豊玉トークをしていますので、お時間がありましたら作業用BGMにでもしていただければありがたいです。

【マンガ語り】スラムダンク映画化でスルーされそうな『豊玉戦』に絞ってトーク(どうしてそこ?)【小黒ユイ】

SLAM DUNKをまだ読んだことがない(もしくは単行本は持っていない)という人は、豊玉戦が丸々収録されている新装再編版15巻を買っとけよ! ドチビが……!!(豊玉流のお別れの挨拶)

記事へのコメント

小黒唯さんのYoutubeチャンネルでトーク配信

配信の方も覗いてみたが面白かった。
最初から板倉トークで盛り上がりすぎ笑

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