金井暁×吉川きっちょむのマンガ語りvol.1 イベントレポート【後編】

月刊アフタヌーン編集長・金井暁さんと、漫画好き芸人・吉川きっちょむさんが、人気漫画家さんをお迎えして、その先生の作品や人となり等について、根掘り葉掘り聞いてみようというトークイベント「金井暁×吉川きっちょむのマンガ語り」vol.1が、2022年12月5日(月)にLOFT9Shibuyaで開催されました。

ゲストは『月刊アフタヌーン』にて『スキップとローファー』連載中の高松美咲先生と、『ヴィンランド・サガ』連載中の幸村誠先生です。

高松美咲 たかまつみさき
アフタヌーン四季賞2012年秋のコンテスト『箱庭のこども』佳作入賞を経て、集中連載『カナリアたちの舟』(全①巻)にてデビュー。
アフタヌーン」2018年10月号より『スキップとローファー』連載開始。

 

幸村誠 ゆきむらまこと
1976年5月4日生まれ。神奈川県横浜市出身。血液型B型。 「モーニング」掲載の『プラネテス』でデビュー。現在は「アフタヌーン」にて『ヴィンランド・サガ』連載中。 2002年、第33回星雲賞コミック部門賞受賞。 座右の銘:「あ、一瞬待ってください、じゃ半日でもいいです」

後編はお客さまから寄せられた質問におふたりが一問一答で答えていくトークイベントの内容を紹介してまいります!

前編のレポートはこちら

 

会場内はほぼ満席の大盛況でした。

好きな映画は?

吉川 後半はお客さんから事前にいただいた質問に答えていきたいと思います。まずはすごく簡単めな質問から。

「好きな映画を教えてください」

高松 有名ですけど『ショーシャンクの空に』とか『ガタカ』とか、好きです。

幸村 『猿の惑星』大好きなんですよ。21世紀になってから作られたリメイク版の方なんですけど。

吉川 どういうところが好きとか、作品に活きていることってありますか?

高松 共通してるのは全然自分と違う人間に共感できたときに、フィクションって素晴らしいなと思いますね。

吉川 それって『スキップとローファー』を読んでて感じることかもしれませんね。僕、「みつみちゃんとちょっと気が合わないかもなぁ…」と思うことも実はあるんですけど、最近の展開がよすぎて…。自分にはない感覚だけど共感できたりしました。(会場を見渡して)雑誌を読まれてる方は結構、うなずかれてますね。

金井 雑誌でも読んでいただけているのは本当にありがたいことです。

吉川 幸村さん的には『猿の惑星』はSFという点で『プラネテス』に活きたりしているんでしょうか?

幸村 『プラネテス』は『2001年宇宙の旅』とかが好きで影響受けてるんですけど『猿の惑星』はなんで好きかというと…ネタバレせずに話すのって難しいですね!

高松 (『猿の惑星』は)もう時効ですよ!

幸村 自由の女神が出るんですよね。

(会場笑い)

吉川 みんな知ってますよ。

幸村 21世紀版は出ないんですけど。

金井 それ僕ネタバレだわ、そうなんだ。

幸村 しまった〜!

(会場笑い)

幸村 何がいいって、猿たちが急に賢くなってしまう瞬間があるんです。「賢くなければこんなに悩み苦しむことはないはずなのに…」という哲学的なものを感じます。

吉川 賢くなればなるほど悩むところですもんね。

幸村 『猿の惑星』三部作は苦しみの歴史を綴っている映画ですね。

愛とは何か

吉川 今度はお互いに聞きたい質問ってありますか?

高松 これ聞きたいですね。

「幸村先生の作品の共通テーマのひとつに《愛とは何か》というものがあると思いますが『プラネテス』のときに比べて愛についてのお考えに変化はありましたでしょうか」

幸村 日本人のくせに愛なんて(笑)…えー、とても真面目な質問をいただいたので、真面目に答えるべきかと思います。愛ってなんでしょうね…。

高松 「生きてること」とか幸村先生のマンガの根本に「哲学しているな、みんな」という印象が私もあります。

幸村 そうですね…。「なぜ、どうして」と色んなことに問うていくと逃れられないものとして立ちはだかるのが愛とか死とか生きるとかで、やっぱり考えざるを得ないんですね。端的な結論として私のなかで「愛」に対して出ているのは「無い」ということです。

吉川 愛は、無い!

幸村 例えば愛と呼ばれる現象のモデルとして「ふたりの人が居てどっちか助けなければいけない」となったときに選んだりしないと思うんです。愛って差別しないんですよ。「無理じゃない?」と。ひとひらの差別も許されないのが愛のはずです。でも我々が普段そういうことばをつかって考えてるときって、恋人や我が子やよく知っている人に対する感情なんです。

吉川 近しい間柄の関係性のことを愛って呼びがちですよね。

幸村 でもそれって超贔屓じゃないですか。自分の好きな人を贔屓することを、愛と呼んでいいのか…というのが今のところある結論ですね。

ではちゃんと愛と呼べる現象がこの世の中や人間にあるかというと、ない。私達はいつも贔屓と差別と偏見と憎しみと…そういうことを繰り返しているだけで、その中でもちょっと肌心地のいいものを愛と呼んでいるだけ。その程度のことにすぎないんじゃないかということですね。

吉川 本当の愛は存在しなくて「愛みたいなもの」が世にはびこっているような感覚。

幸村 でもそれだとがっかりしちゃう気持ちもあるので、こう考えるようにしています。せっかくそういう欠落したものとして生まれてきたということは、生きがいを得たということでもある。この巨大な欠落をどうにかして埋めていくことが、生きるということなんじゃないかと思ったり、思わなかったりします。

吉川 古典でも、自分の片割れをずっと探しているような物語ってありますよね。そういう話とも繋がるのかなという…。

幸村 みんな欠損していると思います。だからこれから色んなことをして、宇宙に行くもよし、新大陸を発見するもよし、深海に潜るもよし、あらゆることをしてみて、私たちの埋められない欠損、どうしても癒せない飢餓感をいつか埋める日を求めて、そのように生きているのではないかと。

これがなかったら生きるってつまらないですよね。ユートピアで心が充足して、完全に満たされて何も不満がない状態でこの世に生まれ落ちてきたら、することが無いです。

吉川 その考えに行き着いたのって『ヴィンランド・サガ』を描き始めてからですか?結婚とかお子さまが生まれたことって関係あります?

幸村 あるかもしれないですね。

高松 何かのインタビューでトールズのシーンは子供が居る今はつらいとおっしゃってましたよね。

幸村 子供を残して死ぬとかそういうのも嫌だし、子供がひどい目に遭うシーンはもう単純に嫌ですね。つらいです。…なんだか真面目な話しちゃった。

吉川 幸村さんから高松さんにはなにを?

幸村 (質問リストを見ながら)さっき「編集長の殺し方」っていうのが…。

(会場笑い)

高松 そこまでは書いてないですよ!(笑)

幸村 「編集長に一撃食らわすとしたら武器は何を選びますか?」か。

高松 連載を終わらせたくないので…。ピコピコハンマーかな。

幸村 僕は電気かな。一瞬で苦しまずに、外傷を残さずに…。

高松 完全犯罪でバレないように…いや、こんなことしたいと思ったことないですね!

 

「編集長へのダメージの与え方」で盛り上がったようす。(高松先生は記事内のお写真出演がNGとなっています)

キャラクターの作り方

幸村 すごくたくさん質問きていますけど…

「『スキップとローファー』の登場人物がみんな大好きです。色んなタイプの子をきめ細かく描き分けていてとても共感できるし、高松先生の愛を感じます。どのようにしてキャラクターを決めているのですか?制作秘話などあれば教えてください」

キャラクターってどうやって作ります?

高松 自分の中にあるものも振り分けるし、自分が学生時代に限らず出会ったひととかもちょっとずつ足している感じです。覚えのあるクラスメートというか、なるべく沢山の人の学生生活のなかに「こういう子居たなぁ」って思える子にしたくて、「まずこういう子が居ます」っていうのを作ったあとで、「なんでこうなのかな」って逆算していくイメージですね。

本人は怒ってると思っていても、多分本当は怖いんだろうなって時とかあるじゃないですか。怖い理由ってなんだろうって考えると自信がないんだろうなとか、ちょっとずつ逆算して描いていってる感じです。たとえばなんで志摩くんって自信が無いのかなと思ったら、あまり親に褒められた経験がないんだろうな、とか。生まれ持った性質に加えて、外的要因をさかのぼって描いていくイメージで作ってます。

吉川 それって結構キャラクターごとに作り込みます?

高松 連載が始まってからは、頭の中で言葉で考えることが多くなった気がしますね。本人の中で自覚していないことをどこまでモノローグで話させるかが難しいなぁと思ったりします。

吉川 例えば、今日お会いしたことで、いずれ僕っぽいキャラクターが今後出てきたりすることも…。

高松 エッセンスが入ってる人は登場する可能性があります。マンガ家と友だちになるってそういうことだと思うんですけど(笑)

吉川 仲良くしてください!

幸村 僕は女性キャラを描くのがすごい苦手で…。

高松 私も男性キャラ描くの苦手です…。

幸村 高松さんが異性のキャラを描くときの何かコツみたいなものがあったら聞きたいです。

高松 コツではないですけど、そんなに変わらないんじゃないかなとは思ってます。いいやつはいいやつだし、やなやつはやなやつだし。どちらかというと男性性を求められてるとき、女性性を求められてるとき、場面場面で男女の差が現れるのかなと思ったりします。

男性は自分を強そうに見せて弱音を吐かないほうがカッコいいとか、女性だったら自分を下げるトークをして「わたしって話しやすいよ」っていうことを作ったり…。女性社会ではこれくらいが生きやすい、男性社会ではこうあらねば、みたいな差なんじゃないかとか。

幸村 男性性、女性性ってキャラというよりもその世界のなかでの女性らしさと男性らしさがあるもんね。

高松 人間関係の中で自分の価値をどうつけようかという動きをしてしまったときに違いがあるだけで。かといって、女性に生まれてしまった以上は男性同士の会話とかわからないですからね。難しいです。

幸村 それは思いますよね、合ってるのかなと。

吉川 高松さんは現代の話ですけど、幸村さんは歴史の中の話で。また男性と女性のあり方は変わるし、答え合わせは出来ないですもんね。

幸村 とりあえず…斧で頭を割るのが男性に期待されてることなのかなと(笑)

吉川 それも今のヴィンランド編だとまた変わってきますよね。

幸村 そうですね。当時の恐ろしい男性性に逆らって生きてやろうということも入ってきます。

金井 高松さんにひとつお伺いしたかったのが、高校時代の感情の解像度みたいなものって、高松さん自身が高校時代のできごとや感覚をビビットに覚えてないと出てこないだろうなと思うんですね。

ただ、大概の人は大学を出たり社会人になったりすると、高校時代の出来事ってどうでもいいこととして捉えなきゃいけないというか「大したことない悩みだったよね」で済ましちゃってる気がします。それをどうやって覚えてるのかなと。

幸村 すごい良い質問ですね。

高松 結構覚えてる方だとは思います。ただ、当時は気にしすぎて、そんなに素直に人付き合いできなかったなって後悔がある気がします。そのままの気持ちでいたほうが友だち作りやすかったはずなのに「この人どんな気持ちでこういうこと言ったのかな」ってずっと考えちゃったり。意識しすぎたら挙動不審になっちゃったりするし、全然うまく行ってない10代だったと思うんですけど。

あとは、作中でもめちゃくちゃ現代っ子を描いてるつもりはないんですね。例えばSNSって描きすぎると10年後20年後の10代が見たとき古いコンテンツになってくると考えたときに、あまり入れないでおこうと。なぜなら、今も昔も10代の悩みって友情・恋愛・家庭とか悩みの根本は一緒なのかなと思うんです、多分変わらない。あまり流行り廃りがあるコンテンツじゃなくて、今も昔も変わらないもので描けたらいいのかなと思ってます。

幸村 学生時代の記憶が鮮明というよりは学生時代の記憶のなかに普遍性を見出しているという…。

高松 あぁ、すごい。そう言われるとかっこいいですね。確かに会社に行ったりしても悩みの根本って仕事の中身よりは人間関係だったりするだろうし…。そのような結論で描いています。

幸村 俺全然なんにも考えないでマンガ描いてた…。人間のこととか全然わからないままで。

吉川 いやそんなことは無いと思いますけど。

金井 まぁわかってたら休載しないもんなぁ(ボソッと)

吉川 急にそんな嫌みみたいな(苦笑)

高松 私は幸村先生のマンガって「考えても答えがないじゃないか」みたいなテーマを入れつつちゃんと王道の面白さや熱さがあるな…ということを思っていて、意識的にメジャーな要素とか入れてらっしゃるのかなと、個人的に聞いてみたかったです。

幸村 来年の講談社漫画賞、任しといてください。どんな不正をしてでもなんとかします。

(会場笑い)

吉川 質問の答えになってないですよ(笑)

幸村 なんでしょうね。連載開始当初は批判もされたんですけど、バイキングに現代の人たちと同じような喋り方をさせてます。全然「オッケー」とか言わせてます。「オッケー言わないだろ、バイキングは」と思うんだけど。

高松 確かに(笑)

幸村 「めっちゃ」とかも言うし。そういうことで、歴史もののとっつきにくさをどう消そうかなとは考えてます。読むのは現代の人なので、その人たちにとって「美味しい味付け」で出したいですよね。

ある程度はバイキングたちのその当時の常識や感情を反映してますけど、今読んでる人たちが楽しいように。今楽しくないとしょうがない。1000年前のひとに向けて描いているわけじゃないので。だからむちゃくちゃですね。とんでもないパンチ力とか。トルフィンが本当にあの力で木までふっとばされたらクッチャクチャだと思うんですよね(笑)

吉川 読者に読んでもらわないことには始まらないから、あくまでそこに視点を置いて。

幸村 ちゃんと現代のエンタメでないといけない。

金井 歴史ものの難しさみたいなところがあって、多分1000年後の日本の国語の授業があったら、「めっちゃ」を古語として習うと思うんですよ。だからリアルタイムの1000年前のフィンランドの言葉を現代日本語訳しようとするとそれはああなるよね。

幸村 「ござる」とかも違うもんね。ヨーロッパの人たちと日本の時代劇とじゃ、それだけで全然違いますし。

アニメ化への気持ち

吉川 「おふたりともアニメ化が決定しています。決まったときの気持ちとか感想を教えてもらっていいですか?」

高松 なんかちょっとジーンとしましたね。

吉川 「やったー!」とかではなく?

高松 アニメ化そのものというよりも、アニメ化するまで読んでもらえるものになってたんだなという…。

吉川 幸村さんは一度目(『プラネテス』アニメ化)の時とかどうでした?

幸村 僕は単行本の2巻が出るか出ないかというタイミングでお話を頂いて、20代前半だったんですけど…「からかってんだろ」と思ってました。どうせこういう話が出てきても、うまくいかないんだろと思って。作画が出てきて進んでるのを見たときに「あ、ほんとにやるんだ」って。それまではあんまり信じてなかったです。

吉川 『ヴィンランド・サガ』のときは?

幸村 まぁからかってんだろと(笑)こんな女の子も出てこないアニメで…血がいっぱい出て…どこに花澤香菜さんを差し挟む余地があるんだと!

金井 アニメの1期のアフレコの現場に何回か行きましたけど、本当に男の人しか居ないですね。

(会場笑い)

幸村 そんなのをアニメにして誰が得するんだろとホントに思ってましたよ。

吉川 噂でアニメの企画自体はポコポコ立つけど流れていく…というのはきいたことがあって、そこまで期待しないみたいなスタンスになるんですかね。

幸村 そうですね、期待しすぎないという。

高松 ガッカリしてしまうから。ギリギリまで嘘だと思っておいたほうが気持ちが楽(笑)

幸村 「やるみたいな雰囲気出してるじゃん!」みたいに思ってギリギリまで自分を防御してます。

金井 何度か制作現場を見に行ったときに、どちらもホントに出来が良くて。『ヴィンランド・サガ』は来年1月9日から放送ですのでぜひご覧いただきたいです。2期を作ろうっていう話はもちろんあったんですけど、奴隷編はスキップするものだと思ってたんですよ。

吉川 面白いですけどね。

金井 ここをやりたかったんですっていうスタッフの方が居てびっくりしました。『スキップ〜』は詳細はまだこれからなんですけど、とても出来がよさそうなので皆さん期待していてください。

高松 制作快調です!

(会場拍手)

理想の編集者とマンガ家デビュー

吉川 次の質問です。「来年の春からマンガ編集者になります。おふたりが一緒に働きたいと思う編集者はどんな編集者ですか?」

高松 その作家さんにとってどういうやり方がいいのかなと考えてくれる方がいいと思いますね。

吉川 今の担当編集さんのここがいいなぁみたいなところって言ってもらえますか。

高松 ちゃんと『スキップ〜』のファンで居てくれるところ。ネーム読んで泣いてくれたりとかするんですけど。わたしの持ち味をちゃんと見てくださるとか、そんなところですね。

吉川 おぉ…。幸村さんの方はいかがでしょう。

幸村 雑談が楽しい。あんまり仕事には関係ないけど、ゲラゲラ笑える話ができると。それだったらいい。このひと(金井編集長)がホントに雑談しかしないんですよ!

金井 それには言い訳があって、今の『ヴィンランド〜』で描いてる話って10年前とかにもう打ち合わせしてるんですよ。10年かかって今日になってもまだ出来てない!

(会場笑い)

吉川 もう話す必要ないじゃんみたいな。

高松 雑談ができると他にもいろんなこと話せますもんね。

幸村 話しやすい人が好きです。

金井 編集者の仕事って99%はマンガ家さんとの打ち合わせなので、その打ち合わせがハリのある形で楽しく出来てると一番いいですよね。そういう方と巡り会えるといいと思います。

吉川 今は編集者との出会い方も色々ありますもんね。

金井 それこそ履歴書送ってもらったりとか…高松さんの場合は新人賞でしたもんね。

高松 そうです。四季賞で持ち込みをしました。

金井 もしかしたらここにもマンガ家目指したり編集者になろうかなと思う方がいるかもしれませんが、お気軽にいろんなポイント探してくださるといいのかなと思いますね。

幸村 結構、編集長向けの質問も多いですね。アフタヌーンらしさってなんでしょうか」

金井 …えぇ〜?(悩)

吉川 ちなみに編集長になられてから今どれくらいですか?

金井 8年くらいですかね。時代によっても色々違うかなと思うんですけど、アホほど真剣なキャラクターが居たり、取っ組み合ってる物語があるマンガがアフタヌーンであってほしいなと思ってます。今なんとなく『アンダー3』のことを思い浮かべながら話してますけどアホほど真剣に脱糞しててもいいんですよ。ちなみに、その『アンダー3』と『スキップとローファー』は同じ人が担当編集なんですよ。

(会場驚く)

吉川 四季賞とか読んでると「アフタヌーンぽいよな〜」とかすごい感じちゃうんですけど。

金井 四季賞読んでいてすごく思うのは、「最終的にエヴァンゲリオンに乗りたがらないままどっか行っちゃう碇シンジくん」みたいなのがいっぱい送られてきます。「乗れよ!」という…。乗らないエヴァンゲリオンって恐ろしくつまらないですよ!

ただ、真剣だからこそ、後ろ向きなことを言ってるんだと思うんですけど、アフタヌーンらしさを求めるならそこで乗るか乗らないかなんですよね。そこまでギリギリまで何かを悩んで思いつめたうえで「乗る」っていう行動に出ることが、らしさなんじゃないのかなと思うんです。

吉川 マンガ家志望の方にもすごく参考になる話ですね。あと、四季賞って作家さんも審査員に入ると思うんですよ。そういう時ってどういう目線で審査をされるんですか?

幸村 僕はもう超、上からのマウントで「先輩やぞ!」という…(笑)

吉川 そんな感じでした?(笑)

金井 四季賞出身じゃないんじゃない?

幸村 あ、そうか先輩ですらなかった(笑)なにかひとつ、ちょっと意地悪な目線で「ここだけは」っていうポイントを言おうっていう風に決めてます。大半は「すごいです」だけど。

吉川 プロの作家として、愛のある意地悪ってことですね。

幸村 かなり自分のことを棚に上げて(笑)アフタヌーンらしさっていうのは確かにわかります。(さっき話したような)新人さんが集まってくるんですよね。まかり間違っても少年ジャンプ的なひと…は来ないでしょ?

金井 来たっていいじゃんと思うんだけどね。

幸村 なんというか、日記のようなマンガを描かれる方が多い気がします。自分の気持ちをどうやったら形にできるかというか。

吉川 高松さんは、もしそういうコメントをする機会が訪れたらどうします?

高松 どうですかね…私が四季賞に応募したのは萩尾望都先生に読んでほしかったという理由で、動機は「読んでもらって意見が欲しい人に送ろう」っていうものでした。自分のマンガって何のジャンルだろうと思ってたときに「何のジャンルでも面白ければいいよ」と言ってくれる間口の広さがアフタヌーンなのかなと思ってました。

幸村 でもエヴァには乗らなきゃいけないんでしょ。

高松 乗らないなら乗らないなりの理由があればいいのかなとも思うんですけどね。

幸村 ちょっと面白そうな気もしてきました。エヴァの前でずっと「乗るかな?乗らないかな?」みたいな話をしてるとか。

高松 ギャグだったらいいのかも(笑)

吉川 この人に読んでほしいと応募者側が思うということは、審査側の作家さんとしたらどこかしら自分に似てる方の作品を読むことになるわけじゃないですか。ちょっと厳しい目線になっちゃったりってあるんでしょうか?

高松 人間だし同族嫌悪とかはあるんじゃないですかね。でもそういうのを持つべきじゃないのも審査員かな〜という気はします。

幸村 アフタヌーンってめちゃくちゃ描き込む人が応募してくるんですよ。スクリーントーンの代わりにカケアミしてる人とか。「よせばいいのに…」という私情が入るんですよ…。描き込みがすごいと評価上がりますけどね。個人的には「その道はつらいぞ」と思ってしまいます。

高松 個人的には担当編集者がつくと、商業化に向けて作品作りをしていくことになると思うので持ち込みの段階では好きに描いていいと思います。最後の機会なのでやりたいこと全部入れて、とことんやるのもよろしいかと思います。

幸村 描き込んじゃいけないって言ってるわけではないんだよね。つらいぞ、という。

おわりに

吉川 …というところで実はお時間がだいぶ過ぎちゃってる!なので、この辺りで締めに向かっていきますが、お二人の方から告知などあればお願いします。

高松 1月23日頃に『スキップとローファー』の新刊が出ます!

金井 アニメの詳細情報もその辺りで公開されますのでチェックしてください!

幸村 1月9日から『ヴィンランド・サガ』アニメの放送が始まります、ぜひご覧ください。

金井 来年のアフタヌーンはアニメが5作品、ドラマが3作品、実写映画が1作品公開を予定していて、これから発表になるものもあります。随時詳報を発表しますのでお楽しみにしていただければと思います。来年、豊作です!

吉川 僕からも…天津の向さんと「週刊マンガ獣」というマンガを紹介するポッドキャストを週イチで配信しています。よければお聞きください。あっ、最新回(12/5配信回)は『カオスゲーム』(アフタヌーン連載)を紹介してますよ!

金井 読んでいただいてありがとうございます。

吉川 というわけで今日は高松美咲先生、幸村誠先生、そして金井編集長にお話を聞けました、みなさまありがとうございました!これからもアフタヌーンを応援していきましょう!

(会場拍手)

 

みなさま貴重なお話をありがとうございました!

 

スキップとローファー』『ヴィンランド・サガ』は月刊アフタヌーンで好評連載中です!

(講談社刊)

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前編のレポートはこちら

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