昭和44年、少女フレンド掲載。古の青池作品は瞳輝く王道の少女漫画。青池保子「おーい青春」「青蓮の恋歌」

先日よく利用する古書店に行ったところ、新しく入荷した漫画が積んでありました。

店主から「水曜教授さん、こないだ入ったんだよ。まだちゃんと見てないけど何か欲しい物ある?」と声をかけてもらいました。

他のお客さんには申し訳ないですけど常連の特権というやつですね。

色々良さげな漫画がありましたが、青池ファンにとってたまらないひと際輝く一冊に目が釘付けです。

若木書房のティーンコミックス。

「やっぱりそれに目を付けましたか。でも状態が良くないんですよね」と店主。

その良くない状態を列記すると、

・貸本使用
・カバーを本体に貼り付け
・カバーの上からビニールをかけて更にそれを剝がしてある
・本体を紐で綴じてある
・本文ページにシミがある
・裏見返しに落書き

といったところです。

裏見返しの落書は貸本屋さんで使用した後、どこかへ流れて所有していた女の子が描いたものと思われます。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

コレクション目的でしたら「あちゃー」となるところですが、なんかいいですね。

この本が辿ってきた道のりの一端が伺えて少し微笑ましい感じがします。

状態が良ければかなりの高額プレミアがつく若木ティーンコミックス。

その中でも青池作品は人気の証明なのでしょう。1ランクか2ランク上のプレミア価格です。

今回は状態を踏まえて更に店主の御好意もあって、かなり良心的な価格で購入させて頂きました。

ティーンコミックスでは『続・おーい青春』も出版されており、続きが読みたいのはやまやまですが入手難易度は高いですね。

ティーンコミックスの青池作品を所有するのは初めてです。

いやぁ、いいですね。

手に取って眺めているだけでお酒のつまみになりますよ。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

収録作品は「おーい青春」と「青蓮の恋歌」の2作です。

調べたところ「おーい青春」は『週刊少女フレンド』で連載。

「青蓮の恋歌」は別冊少女フレンドに掲載。

どちらも1969年、昭和44年です。

本の出版は昭和45年2月発行となってます。

目次では「青蓮の恋歌」が「青春の恋歌」になってます。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

おーい青春」の併載で恋歌と来るのであれば、前が青蓮ではなく青春と間違えるのは仕方ないところでしょう。

カバー絵といい、この目次の絵と「おーい青春」の扉絵は本当に良いですね。

現在の青池さんとは全く違う絵柄ですが、昭和の王道少女漫画テイストたっぷりでうっとりしてしまいます。

おーい青春」は学園物です。

向かい合って建っている「西山女学院」と男子校の「東海高校」。

両校の合併話からのドタバタ騒動が大まかな話の流れです。

主人公は「西山女学院」の若林昌(あき)。

東海高校体操部キャプテンの郷田くんとちょっとした事で揉めてから、合併反対をとなえます。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

そして昌の姉や郷田くんの兄(東海高校の教師)、西山女学院の女性教師、合併担当の市役所の男性が絡んでの大人の恋話も交えて展開していきます。

実にゆるふわで肩の力を抜いて楽しめる作品です。

 

「青蓮の恋歌」は青池さんとしては珍しい中国が舞台です。

青池さんといえばヨーロッパが舞台の印象が強いのですが、この他にも描かれているのでしょうか。

青蓮は主人公の名前です。

母を亡くした後再婚した父の後妻に辛く当たられ、更に父の借金のせいで望まない政略結婚を強いられてます。

粗暴な結婚相手が庭先で白蛇を殺そうとしたのを、止めて助けたのが話の始まりです。

人の姿に身体を変えて青蓮に会いに来た白蛇は「劉光」と名乗り、二人は恋に落ちます。

当然この恋は妨害され劉光の正体も明らかになり、妖怪として殺されそうになります。

人間の仕打ちに怒る劉光。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

白蛇の姿に戻った劉光は青蓮と絡み合い、愛を確かめ合うところに屋敷へ大きな雷が落ち大火災となります。

廃墟となった屋敷に青蓮と劉光の姿は無く、物語は終わります。

手書きの「完 おしまい♡」がいいんですよ。こういうの好きです。

『おーい青春』(青池保子/若木書房)

幻想怪奇を大きく出さずに、人間と物の怪の恋を描く秀逸な短編です。

青池さんとしては異色の作品と思いますがどうでしょうか。

残念ながらこの2作品は電子では読めない様です。

1975年くらいまでの初期青池作品は書籍として復刊されているのかもわかりませんでした。

あればいいですよね。できれば全集の出版も望みたいところですが実現は難しいでしょうか。

今回は手に入った喜びが大きい、貴重な青池作品の書籍を紹介しました。

 

 

記事へのコメント

bookoffだと値段つかなそうなこういう落書きがある本も貴重ならこうやって流通して愛好家の手に渡るもんなんだなあ。すごい世界だ

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