活躍する「トキワ荘」勢の4作品が光る。女児向け漫画月刊誌は令和の今も健在。講談社『なかよし』昭和36年2月号

昭和30年代の漫画月刊誌は、なかなか思い切って買えない高額で販売されてます。

しかしついこの前でした。

背表紙をテープで補修してある為、通常のプレミア価格より安く売られている『なかよし』を発見し即購入しました。

落丁も無く、お買い得だったと満足する買い物です。

女児向けの漫画月刊誌より男児向けの漫画月刊誌の方がプレミアは高い傾向にありますが、専門店の店頭に並ぶ品数は女児向けの方が少ない印象が強いですね。

今回調べて知りましたが『なかよし』の創刊が1955年(昭和30年)1月号。

同年の8月に『りぼん』が創刊されてます。

漫画月刊誌が昭和40年代前半にはほぼ姿を消したのに対して、『なかよし』も『りぼん』もいまだに発行され続けてます。

これは凄い事だと思うのですが、理由は検証出来てません。

おそらく既に検証されているのではないか、と思いますが私はまだ読んだ事がありません。

いずれ機会があれば読みたいですね。

では内容の紹介に移りましょう。

表紙に書かれた情報は12点の付録と「とくべつまんが 雨の子のうた」という「つのだじろう」さんの作品タイトルのみです。

本誌の内容にほとんど触れない表紙はどうなの? と思いますが、当時はこれで良かったんでしょうね。

もっと入手して比較したいところです。

まず目次を見ましょう。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

「おもしろいまんがのページ」と題され14作品です。

目次の一番上ですが、文字の大きさが他の企画と比べると少し小さめです。

何より漫画家さんの名前が記載されてません。

読み物も同様で、戦前から昭和30年代の雑誌ではよくある事ではあります。

せっかくなので漫画家さんだけでも書いておきましょう。

エンゼルの丘    手塚治虫
かのこちゃん    鈴木みちを・原作 山根赤鬼・まんが
雨の子のうた    つのだじろう
ミーちゃんふたり  よこたとくお
小リスちゃん    中島利行
石の花       水野英子
こつぶちゃん    江原伸
しあわせの星    赤松セツ子
ドレミハララちゃん 伊東あきお
あらマアちゃん   赤塚不二夫 
となりのマコちゃん 前川かずお
はまべの歌     林栄子
花の子マリ     古城武司
ひろった五百円   丹野ゆうじ

今の方には馴染みがない漫画家さんも多いと思いますが、私の世代的にはなかなかの豪華な顔ぶれです。

手塚さん、つのださん、水野さん、赤塚さんとトキワ荘に関わった方が4人。

後ほど紹介します。

まず表紙をめくると「岸田はるみ」さんの美しいイラストが映えます。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

良いですよねぇ、昭和世代にはたまりません。

綴込みの懸賞応募券が残っているのは貴重ですが付いている番号が当選番号の場合は講談社へ送る事になっていて、あるという事はハズレだったのでしょう。

この当時で500万円の懸賞は破格だと思います。

何が500万円なのか懸賞ページを見てみましょう。

講談社児童4誌連合となっているので他の3誌と同じ景品の懸賞なのでしょう。

かなり気になりますが、他の3誌の特定はできませんでした。

特等が「スバル360」か「アップライトピアノ」です。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

ピアノはまだしも、児童漫画誌の景品に車ですよ。

驚きです。

てんとう虫の愛称で知られるこの車は子供の頃よく見ましたが、今はまず見かけません。

愛好家が大事に乗っている筈なので見られたらラッキーだと思っていいでしょう。

一等は「テレビ」か「オルガン」を4名に。

これも奮発してますね。

「すごいでしょ!3月号にもつくのよ」と謳い、なんと4月号も5月号も続くとなっているではありませんか。

どう読んでも2、3、4、5月の4か月に渡っての一回ではなく、毎月あるわけです。

ただ検索したところ「スバル360」の当時の販売価格が42万5千円だったようで、500万円というのは4回分合計だと推察されます。

更に驚きなのが通常の懸賞もある事です。

こちらはクイズの答えを書いて応募する形式で、応募券も残ってます。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

3名に当たる「姫鏡台」がいいですね。

この豪華な懸賞は講談社だけが行ったのでしょうか。

他の出版社はどうだったんでしょう。

週刊少年マガジン』の創刊から2年後の昭和36年。

私が生まれた年でもありますが、この懸賞の力の入れ方から漫画の勢いをひしひしと感じます。

勿論高度成長の時代でもありますが、漫画というマーケットに力を入れて行く過程が伺えてとても興味深い懸賞ではないでしょうか。

では漫画の14作品全部は無理なので、トキワ荘関係の漫画家さんの作品を紹介しましょう。

トップを飾る漫画は勿論手塚治虫さん。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

カラー扉です。

もう切り取って額に入れて飾りたいくらいの素晴らしさです。いやしませんけどね。

続いては「つのだじろう」さんの「雨の子のうた」。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

こちらもカラー扉です。

昭和30年代の社会風俗を表す「だっこちゃん」というビニール人形が腕についてます。

そして下に小さく「新漫画党」のマークが。

これは初めて見ました。

まんが道』好きとしては嬉しいですね。

作品はとても優れたファンタジーです。

つのだじろう」さんといえばオカルト漫画のイメージが強いのですが、その前は児童向けのとても優れた作品を多く描かれてます。

次号にも載っている様で、読みたいのはやまやまですが入手難易度は高いですね。

次は「水野英子」さんの「石の花」。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

バレエを描いた連載作品です。

最後は「赤塚不二夫」さんで「あらマアちゃん」です。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

連載9回目で5ページの作品。

とても貴重な柱文に気が付きました。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号

赤塚さんへのお便りの宛先がなんと、なんと、トキワ荘なんですよ。

だから?とか言わないでくださいね。

調べたところ、この昭和36年に赤塚さんは結婚の為トキワ荘を退去されてます。

翌年の昭和37年に『おそ松くん』と『ひみつのアッコちゃん』の連載開始。

以降とてつもない活躍をされるのは御存じのとおりです。

トキワ荘の住所が載り、赤塚さんがまだ在住しているという柱文。

トキワ荘に絡んだ漫画史の重要な証拠、だと思いますがちょっと大袈裟ですか。

最後についでと言っては何ですが、63年後の2024年2月号の『なかよし』と並べた画像をお届けしておきます。

『なかよし』(講談社)昭和36年2月号、2024年2月号

2024年2月号は付録の『ぽんのみち』特製カード麻雀セットの為に昨年暮れに買いました。

今年63歳になる私と同じ隔たりの『なかよし』2月号が手元にある偶然。

1961年の質素な表紙と2024年の煌びやかな表紙。

漫画の歴史と大きさを感じさせてくれる2冊です。

 

 

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